ミレニアム・プロミス・ジャパン(MPJ)

極度の貧困は根絶できるはずだ
私たちの孫の時代ではなく、
私たちの世代のうちに
極度の貧困は根絶できるはずだ  私たちの孫の時代ではなく、私たちの世代のうちに

外務省アフリカ第二課・岡井課長の講演報告を掲載しました!

 昨年12月、東京大学グローバル・リーダーシップ・スタディーズ(読売新聞寄付講座)とMPJ「ユースの会」(代表・中野宏一)が共催で、外務省中東アフリカ局アフリカ第二課・岡井朝子課長をお招きして、研究会を開催いたしました。
 岡井課長は日本外交の第一線で、対アフリカ政策を取りまとめていらっしゃいます。用意して下さった資料も総括的で内容が濃く、年末の祝日前夜に集まってくださった聴衆の皆さまにとって、非常に有益な研究会となりました。ちなみに外務省への就職希望者も増えたようです。
岡井課長.jpg岡井課長2.jpg岡井課長の聴衆.jpg
【日時・場所】  2009年12月22日(火) 18:00~19:30
         東京大学本郷キャンパス 法学部法文1号館26番教室
【テーマ】    アフリカ開発の最前線
         ~日本にとってのアフリカ、アフリカにとっての日本~
【講師】     岡井朝子氏(外務省中東アフリカ局アフリカ第二課長)
【概要】     1.日本にとってのアフリカ
         2.成長するアフリカ
         3.第4回アフリカ開発会議(TICAD Ⅳ)の成果とODAについて
         4.TICAD Ⅳで日本が表明した支援策
         5.官民連携について
         6.日本の現状と今後の取り組み
         7. 質疑応答
講演内容は「続き」をお読みください。

1.日本にとってのアフリカ
■ アフリカの国々
はじめに、日本にとってのアフリカという点をまず見てみたい。日本ではアフリカというのはまだまだ遠くて、アフリカというとそれ自体で1カ国のようなイメージさえあるが、実際には53カ国ある。世界の人口の15%を占める10億人もいる大きなところで、面積も世界の約2割を占める。
・大使館
日本の外交力強化という点から、昨今、大使館を増やしてくる努力をしてきたが、民主党政権では、経費削減の折、これから増やしてはいけないと言われている。しかし、まだまだ少ないのが現実である。日本国大使館がある国は28カ国、逆にアフリカ側から日本に在京大使館という形で置いているのが35カ国で、アフリカ側が置いている数の方が多い。中国が、台湾が置いているところ以外は全て置いていることを考えると、この拠点の数というのは、まだまだ少ないのではないかと思う。
■ 日本にとってのアフリカ
一般的にアフリカは私たちにとってどういう意味があるのか。
・国際社会全体の課題の克服への貢献
アフリカには、貧困の問題、感染症、難民、気候変動、紛争や海賊問題等、色々な課題が山積しており、これらについて、なんとかしてあげなくてはならない。国際社会全体の課題を解決するためのリーダーシップを日本がとるにあたってアフリカは主戦場だろうと、そのようなイメージでアフリカを見ている方もいらっしゃるのではないかと思う。その通りで、アフリカの問題の解決なくして世界の安定と繁栄なしということが言えると思う。だからこそ、私たちは遠いと思いながらもアフリカに関わる。
・我が国の外交基盤の強化(アフリカ53カ国は世界の4分の1)
他方で、日本は今苦しいのだし、ヨーロッパに任せておけばよいのではないかという話もある。しかし、一般の国民の皆さんにはなかなか見えないかもしれないが、アフリカ53カ国は世界の4分の1の大票田であり、国際社会での支持を集めていくためにはアフリカの支持がないとなかなか色々なコンセンサスを得ることができないのである。昨今ではCOP15(第15回気候変動枠組条約締約国会議)で、途上国の利益と先進国の利益がぶつかりあい、合意に行きつくまでに、新しいフレームワークを作るには至らず、政治合意をしようと思ったのだが法的拘束力のない形でしか合意を導き出せなかったということがある。日本がそういった国際社会での枠組み作りに貢献していく中で、アフリカのそれぞれの国とどれだけ関係をもっているのかということは、非常に大きな基盤だといえる。
・我が国とアフリカ双方の経済発展を促進
これはもう少し私たちの実益に関わる部分かもしれないが、アフリカは経済発展の分野で非常に大きなポテンシャルをもっている。アフリカは今「希望と機会の大陸」ということで、世界からの関心が増大しており、成長市場としてみられるようになっている。一般の国民の皆さんには、アフリカは危険で紛争ばかりやっている、病気が蔓延しているところだというイメージがある。しかしながら、実は、90年代から比べれば多くの紛争・内戦が終息し、豊富な天然資源があり、急速な成長を遂げており、中国のみならず欧米、新興国も含め、各国が非常に期待を込めている大陸である。
2.成長するアフリカ
■ アフリカの多くの国が政治的安定を実現
90年代、アフリカでは多くの紛争が起こっていたが、現在はソマリア、ダルフール、コンゴ(民)の東部といった、紛争が以前から続いている地域以外はほとんど終息している。最近になってマダガスカル、ギニア、モーリタニアのようにクーデターが起きて不安定化したところがあるが、それらは局所的である。
残念ながら、アフリカについて書かれた本は、90年代に書かれたものが多い。「新書アフリカ史」という古典的なアフリカの勉強をする人の基本書があるのだが、それも90年代前半までの記述で終わってしまっていて、それ以降どれだけアフリカが成長したかについての記述の部分がまだまだ少ない。最近は成長する10億人の市場ということをアピールする本が出てきて、変わったのだということにようやく皆が気付き始めたという状況だ。
■ アフリカの豊富な天然資源と欧米、中国等の相次ぐ要人訪問
アフリカには、豊富な天然資源があり、世界でのランキングも非常に高い。たとえば一つの鉱物について日本がアフリカに依存している度合は7割であり、そのような鉱物資源が沢山ある。現在、100万人程の中国人がアフリカ大陸にいると言われているが、中国が沢山のお金をかけて人を送り込んで資源の開発に一生懸命になっているというニュースをご存知だと思う。中国の国家主席、国務総理、外交部長のアフリカへの訪問は2004年以降37カ国以上だが、その間日本が首脳レベルで行ったのは森総理と小泉総理の2回だけであり、外相の訪問もほとんどない。かたやアメリカは、オバマ大統領になってからガーナを訪問し、クリントン国務長官も今年の8月にケニア、南ア、アンゴラ、コンゴ(民)、ナイジェリア、リベリア、カーボヴェルデを回っている。ロシアのメドベージェフ大統領も行っているし、もちろん英仏のような旧宗主国のトップは頻繁に往来している。
■ アフリカは、近年、目覚ましい経済成長を実現
過去10年間の年平均経済成長率は、サブサハラは5.6%である。日本も含めた先進国の経済がマイナスで低迷していることに比べると目覚ましい成長率である。しかも、平均して5.6%ということであるから、たとえばアンゴラは7年前に紛争が終息した後に年率20%程の比率で成長していったということになる。
アンゴラの2008年の成長率が15.8%で、2009年がマイナス(-7.2%)になっているのは、アンゴラが石油産出国で、経済金融危機の影響を非常に受けたからである。しかし、回復基調にあり、来年には9.3%成長するという見通しが立っている。紛争がある地域やクーデターが起きた地域を除くと、ほとんどの国のGDPの成長率が3%を超えると予測されている。
■ サブサハラ・アフリカの「市場」としての潜在力
サブサハラ・アフリカは約8.3億人の成長市場である。
たとえば携帯電話の普及についてみてみると、日本を含むアジア・太平洋の普及率は60%程度だが、北アフリカでは約90%であり、サブサハラ(資源国)はアジア・太平洋より少ないものの、サブサハラ(非資源国)でも同程度になっている。また、その成長率たるやアジア・太平洋の倍以上である。
■ アフリカ大陸全体としては世界11位の経済規模
世界銀行の国民総所得についての統計では、アフリカは11位にランキングされる。2007年は10位だった。53カ国をすべて足せば、ロシアやインドを上回る経済規模であるということだ。
■ アフリカ各国の一人あたり国民総所得
一人当たりの国民総所得については、一万ドルを超える国が3カ国あり、中国を上回る国が12カ国ある。このことから、色々な格差があるのだということをご理解いただけると思う。ただし、上位にランキングされている国に貧困がないというわけではない。資源のおかげで全体の総所得が上がり、それを国民の人数で割るとこういう結果になるのであって、こうした国に貧困のための支援がいらないというわけではない。格差是正のためにどう貢献していくのか、そして、資源があるために紛争になったという過去を持つところも多いので、どのように資源管理をしていくのかというのが課題である。
3.第4回アフリカ開発会議(TICAD Ⅳ)の成果とODAについて
■ TICAD Ⅳの成果
TICAD Ⅳは、2008年5月に横浜で行われた。日本では外交史上類例をみない規模で行われており、ODAの倍増や民間投資の倍増等、多数のアフリカ開発支援策を発表した。それだけを聞くと、アフリカに大盤振る舞いをしているようなイメージをもっていらっしゃるかと思うが、外交当局としては成果をアピールするためにそういっている。その背景にある客観的情勢をしっかり踏まえる必要がある。
■ 対アフリカODA倍増
ODA倍増の内容は、2003年から2007年までの実績の平均値を基準として、9億ドルから18億ドルに倍増させるというもので、この実績には債務救済分を除き、円借款を含む。そして、無償・技術協力を7億ドルから14億ドルに倍増するというものである。
■ 主要ドナー国におけるアフリカ(サブサハラ)向けODA贈与合計とDAC総計に占める割合(債務救済を除く)
DACとはドナー諸国の集まりで、現在22カ国が入っており、中国やインドは入っていない。サブサハラ向けODA贈与について、その中で日本が占める地位は、2003年6位、2004年10位、2005年10位、2006年8位、2007年9位である。日本よりも上にあるのは欧米(北欧も含む)である。絶対的な数値を見ると日本は、2004年は若干下がっているものの、それ以降は額としては上がってきている。しかし、それ以上に他の諸国もアフリカへの支援を増やしてきていることもあり、相対的順位はこの辺りである。
■ 日本のODA予算の現状
日本はここ10数年間でODAを40%以上カットしてきた。その結果、日本はトップドナーの地位から現在5位まで転落しており、国力の低下ということが見えると思う。そのような中でのアフリカ支援の取り組みだということを、客観的数値として知っていただきたい。
■ 2006年以降、アフリカへの直接投資がODAを超過
2006年以降、世界のアフリカへの直接投資額が、ODA額を超過した。全世界の額と比べると日本の額は非常に少ないが、日本ならではの支援をして、資源目当てのどこかの国とは違うのだと言うことを一生懸命示さなければならない。日本の得意分野、日本ならではの技術などを駆使して支援を展開しようというのが横浜行動計画である。
日本がTICADをはじめた93年頃、日本はトップドナーだった。欧米諸国が、アフリカへの援助疲れで、行き詰まり感がある中、日本がアフリカを見捨ててはいけないということではじめたプロセスがTICADである。こうしたフォーラムは日本が先鞭をつけたといえる。その後、中国や韓国が真似をするようになり、ここ数年でFOCAC(中国・アフリカ協力フォーラム)や韓国・アフリカフォーラムが行われ、最近のニュースで見た人がいると思うが、ほぼ横浜行動計画を真似した形で行動計画を作ったりしている。またアフリカとEUにおいてもフォーラムがあるし、アフリカとインドとの間にもある。韓国の場合は、額的にはまだ日本の方が多いので、その点ではメニューを真似してきたという感じだが、中国の場合は、支援の中身はともかくとして、圧倒的な額であり、日本の額と二桁位違うと思う。
たとえば、アンゴラは石油が採れるところで、中国が一番力を入れており、中国人20万人がいるといわれている。そしてここ数年間だけで1兆円を超える規模の融資を借款という形で出すということだ。資源獲得のための権益をとり、インフラを中国企業がまとめて受注して中国人を何万人も送りこみ、道路や港を作って、資源を掘り出していく、ということをやっている。また、日本の製造業はハイエンドのものを作っているが、中国人にとっては普通のビジネスのチャンスとして、中国が今作っているものがアフリカで有用であるということで、衣料から日用品に至るまで、中国製品が圧倒的にどんどん輸出されている。色々なモノ、サービスについても中国がかなり入っており、たとえばAfDB(アフリカ開発銀行)でも中国が受注する率が高く、土木建築では入札の約半分を受注するなど、大変な勢いである。また、一旗揚げたくて入ってきて、少しお金ができるとそこに居ついてしまうところがあって、田舎に至るまで、中国料理店がある。中国の他にも、欧米諸国がものすごい勢いで投資している中で、なぜ日本は来ないのかといわれる。
先週、アフリカにいる日本の大使たちが帰国し、大使会議があったのだが、中国のプレゼンスについて議論するセッションがあった。たとえば、エチオピアの一等地に非常に目立つ建物があり、これが中国の建てているAU(アフリカ連合)の今度の本部の建築物だということで、どんどん目立つところに中国企業が建設している。更にエチオピアでは、携帯電話の普及を中国の企業が一社で請け負い、何千人もの技術者を連れていくということである。そうした状況では、日本の大使を見るとアフリカ人は、中国人かと思う。その次に韓国人、インドネシア人ときて、その後ようやく日本人だと言われるということを、実体験としてエチオピア大使が言っていた。
しかし、こうした状況に負けてはいられないし、日本ならではの支援を行わねばならない。では、なぜ日本が信頼を勝ち得ているのか、そして、なぜ日本への期待が多いのか。
その理由の一つは、トヨタのランドクルーザーの性能のよさである。アフリカの、インフラが整わない環境においては、すぐ壊れる車よりも丈夫な日本車の技術性への信頼が高い。そして、日本は技術力があるというレジェンドが今も健在であり、日本に来てもらいたいという気持ちはある。特に、中国がそうとう入ってきたために多様化を図りたいという気持ちが色々な国に出てきている。たとえばアンゴラも中国べったりで色々やってもらったものの、もう少しバランスをとった形でやるため、日本を含むその他の国に積極的に協力を働き掛けている。また、中国が資源獲得のために集中してやりすぎた結果、労働働条件が悪化し、技術移転もせずに搾取のような形になってしまっており、暴動が起きたりして、徐々にそうした歪みも出てきている。そうした中で、日本の支援というのは、技術移転を行ってくれて、上から目線ではなくて共に汗を流しながら一緒に開発に取り組んでくれるという信頼感が大きいのである。90年代、日本がまだトップドナーだったときには、アフリカで日本がトップドナーだった国というのは4~5カ国以上あったと思う。しかし、今は日本がトップドナーになっているアフリカの国はない。ただ、過去に培ってきたよいプロジェクト、よい施設、よいインフラ、また、長年技術協力をやっていたところでは成果が上がってきており、それが地元の自立につながっている等、至る所に色々なサクセス・ストーリーがある。そういった、これまでやってきたことの財産で、今ももっていると思っている。これを損なわずになんとか日本の存在感を維持したいと思っていることが、外交当局としてもTICAD Ⅳのコミットメントをきちっとやっていくということに込められた、非常に大きな背景である。
4.TICAD Ⅳで日本が表明した支援策
横浜行動計画の下で今後5年間にとられる措置には4つの柱があった。すなわち、成長の加速化、MDGs(ミレニアム開発目標)の達成、平和の定着、気候変動の対策である。これらの下に、日本が具体的にどのような支援を行っていくかを取り決めたのが横浜行動計画であり、アフリカを元気にしたいということをテーマに行われたものだ。予算が限られている中では、何でもできるわけではないので、ここで表明した柱というのは、日本がそれなりに独自性を出して他のドナーの取り組みに比しても比較優位性がもてるだろうとか、日本ならではのやり方ができるだろうというところを厳選してピックアップしたものだ。
成長の加速化の柱に入っているのが、インフラと農業・農村開発、貿易・投資・観光である。次に人間の安全保障(MDGs達成と平和の定着分野)があり、MDGs達成の中でも、コミュニティ開発と保健と教育を採り上げている。平和の定着とグッドガバナンスというのが3つ目の柱で、気候変動というのが4つ目の柱ということだ。
■ 支援策の具体例
支援策の具体例としては、広域インフラの整備として通関手続きを円滑化するために何か所で行うとか、何万人の農業指導員を育成するとか、灌漑施設を普及させ、灌漑面積を何十万ヘクタールにするとか、そうした数値目標を入れ込んで、努力するということにしたのが横浜行動計画の特色である。たとえばミレニアム・プロミス・ユースの方にもなじみの深いミレニアム・ビレッジを12カ国で展開するというのも横浜行動計画に入っており、教育と人材育成では、学校を1000校作って、更に10万人の理数科教員の能力を向上させるとか、1万校での学校運営能力を向上させるとか、保健では、10万人の医療従事者を育成するとか、650万人に水を提供するための給水施設を整備する、等々がある。
■ TICAD Ⅳフォローアップのプロセス(原則年1回)
TICAD Ⅲまでは、宣言をした後にどれだけ成果が上がったのかということを個別具体的にモニターしてこなかった。TICAD Ⅳでは、フォローアップ・メカニズムを創設し、年次報告書を毎年作成し、フォローアップ会合を毎年行うというプロセスを重ねることになった。これが横浜行動計画の一つの特色である。私はTICADフォローアップ事務局の運営を担っている。1回目のフォローアップ会合が今年の3月ボツワナで行われ、来年5月に向けて2回目のフォローアップ作業を行おうとしており、現在新しいウェブエンジンを立ち上げようとしている。どの機関がどの国でいつやろうとしているのかということが、それぞれ横浜行動計画で採り上げた分野で、すぐにわかるようなデータベースを構築しようとしている。
■ 各支援策について
①アフリカがつながる広域インフラ整備
アフリカは全体として10億人の市場であるといっても、分断されていて全体がつながっていないと、物流が滞ってしまう。昨今、民主党政権がコンクリートから人へと言っているが、まだアフリカには、コンクリートが必要な部分が大きくある。大陸の主要な根幹道路を回廊といっているが、その中に未完成の部分があり、そのような部分をミッシングリンクというが、それをマッピングしたという貢献がまず一つ挙げられる。更に、そうした所に集中してドナーを呼びかけながら、つなげる努力を行っているのが、大きな取り組みの一つだ。
たとえばモザンビークにナカラ回廊というところがある。日本だけではないが、世界銀行やその他のドナーも連れてきて、なんとかマラウィもザンビアも港までつながるようにしようというようなことを議論しながらやっているのが、広域インフラ整備の一つの形態である。
②貿易・投資・観光
2012年までにODA倍増といったが、投資倍増を実現できるように支援するというのもコミットメントの一つである。そのためにJBICのファシリティ25億ドルや、円借款の40億ドル等を表明したとともに、官民連携のための合同ミッションを送ったりしている。
国際協力局ではODAをベースとした協力を中心に取り組んでくれているため、私のいる地域局では、個別のフォローアップ事項としては、貿易・投資・観光の促進が大きな比率を占める。私が今最大の関心事項として取り組んでいるのが、日本の民間企業の人たちにアフリカ進出をしてくれるよう働きかけることである。ODA離れが民間企業で進んでいる。ODA予算が大きく削減されると、ひとつひとつの案件がどんどん小さくなり、また、一カ国で継続受注ができなくなる。すると、アフリカに事務所を置いていてもしようがないということで、どんどん撤退してしまったという流れである。また、DACでのアンタイド化という議論の中で、どんどん円借款や調達をアンタイドにしていくと、受注できる競争力が日本の企業になくなってしまい、中国が受注してしまうという事態も進んだ。日本の企業としても、アフリカはコストが高いし、遠いし、人を置いてやっていても、受注できるのかもわからないし、ということで引いてしまったのである。この事態はとても悲しいことで、せっかくODA倍増をやるので、日本の企業に、日本ならではの技術を駆使して、日本ならではの援助をしてもらいたいと思う。ユニセフやWFP等の国際機関に通じることも非常に有意義であるが、バランスを取りながら日本企業にも入ってもらった形で、ODAの倍増を行いたい。それには、民間人のビジネスをやりやすくするためのODAの活用も考える必要がある。たとえば、資源は奥地にあるわけだが、積み出すまでの道路を民間の人に作ってもらおうとしても、それは採算が合わないので投資できないということになるのだが、そこはODAで行うことにする。そうすれば、その民間企業だけではなくて、その国の経済発展や貧困削減に資するのである。このように、官民連携で行う支援が、その国の経済発展に資する形でODAの用途としても適正で、またそれを使ったことによって日本の民間企業も資源の権益を得られたとか、ビジネスが成り立つとか、そういうことがあってよいのではないか。こうしたところから、官民一体となったアフリカ進出を目指しましょうということを掛け声に今取り組んでいるところである。
③農業・農村開発
TICADで表明した支援策には、農業生産性を上げるための色々なメニューがある。一つ分かりやすい数値目標ということで私たちが採り入れたのが、アフリカにおけるコメの生産量倍増への貢献である。CARD(アフリカ稲作振興のための共同体)という枠組みを作り、具体的に計測可能なアウトカムを出そうという取り組みだ。これは、農業生産性の向上にも併せて取り組むので、コメだけ生産量倍増をするわけではない。ただ、コメを採れるところで展開することにより、日本の技術者を活用できるのである。日本の農業専門家で小麦やメイズの専門家はあまりいないので、その分野での取り組みをしようとしても日本人の活用というのが限定的になって、どちらかというとインフラ物中心になってしまう。そこで、日本らしさを出すという意味では、コメを集中的にやるのもよいのではないかと考えた。具体的には、コメを食べるところと食べないところがあり、コメの栽培に適したところと適さないところがあるので、そこを厳選してグループ分けをし、ファーストグループには率先して支援の展開を考えるとともに、その他の農業生産全体に資するように品種改良や農業指導人の育成や灌漑等を併せて行っているのが、農業分野での支援だ。
④コミュニティ開発
MDGsの柱に、なぜコミュニティ開発が入っているのか。これは、コミュニティ開発という発想自体が、日本のアプローチとして有用性を証明できるのではないかということでの、切り口としての採り上げ方である。
コミュニティ開発では、‘包括的な「グローカル」コミュニティの開発’と‘機能的ハブを活用したコミュニティに根ざしたアプローチ’の二つの分野の支援に焦点をあてている。グローカルとは、グローバルかつローカルということで、日本から発想した一村一品運動を広く展開し、農村開発をしながら更に輸出振興までつなげていこうとしている。もう一つは、アフリカン・ミレニアム・ビレッジを展開するということで、これは、集中的にマルチセクトラルで資源を投入することによって、非常に効果の高い援助ができるという考え方である。それ以外にも参加型、マルチセクトラルといった考えを取り入れているアプローチが多々ある。例えば、「みんなの学校」(⑥教育と人材育成)は、学校をコミュニティのハブとして、水衛生システムの整備を一緒に行い、学校に行けば、きれいな水を得られて、女の子は女子トイレにアクセスできるようになったり、学校給食により、皆が学校に来るようになって、教育へのアクセスを向上させたり、PTAを組織化して、たとえばPTAで学校の近辺に農園を作り、そこで小さな農業をやることにより自給自足につなげる等、そうしたマルチセクトラルなコミュニティ開発の輪を広げていきたいということで、この発想を広めようとしている。こうした活動では、JICAとユニセフとWFP等が協力して行い、マルチとバイの連携ということが言われる。私も人道支援室にいたときは、マルチとバイの連携を推進するために色々なパートナーシップのプログラム作りを具体的に行う立場にいた。そういった形で連携を促すやり方というのは、非常に大きな意味を持つと思う。
⑤保健・医療
G8の洞爺湖サミットのときに、日本の主導で洞爺湖国際保健枠組みというものができた。地球規模課題に日本がどれだけリーダーシップをとれるのかという点において、保健というのは非常に重要な分野である。
2000年の九州・沖縄サミットのときに、日本が感染症対策を主要課題とし、その流れで世界基金が出てきた。そして、これまで、感染症なら感染症、HIVならHIV、結核なら結核、マラリアならマラリアというように、個別にバーティカルなアプローチをとっていた。
しかし、昨今のユニセフの研究やデータベースを見ると、母子保健と保健システムの強化というホリゾンタルな部分でのアプローチをテコ入れすることによって、より効率的に感染症対策にも資するし、MDGsの一つの大きな課題である死亡率の削減というところにも資することが分かる。洞爺湖での枠組みというのは、こうしたことから、包括的なアプローチをとるように日本が作ったものであり、その実践をこのTICADの場でやっていくというわけである。
⑥教育と人材育成
英国や北欧の国では、財政支援型の援助、すなわちプールファンドに、各ドナーからの資金援助をまとめ、ひとつの支出方針の下、予算配分するという援助形態をここ10数年推進している。プールファンドが効率的に予算システムの運用を促し、そうすれば末端にまでお金が回って、システム全体がうまくいくだろうという発想である。日本がプロジェクトタイプの支援を中心だったので、援助潮流の世界ではモダリティのバトルが繰り広げられた時期もある。
アフリカには、財政支援のメッカといわれる国々が多数ある。英国・北欧系は、モザンビーク、タンザニア、エチオピア、その他の国々に財政支援を行っている。教育分野においては、日本は学校等を一軒ずつ堅固に作るようなプロジェクトを行ってきたが、財政支援を行う国では、青空学校でもとにかく機能さえすればよいのだという考えのもとにやってきた。しかし、最近は、それだけでは上手くいかないことがあることも段々分ってきて、プロジェクトも悪くないと思われるようになってきた。
英国・北欧等の財政支援推進国が教育分野に多大な資金援助を展開している中で日本のよさを出せるものとして選んだのが、理数科教員の能力向上の部分である。理数科教育ということであれば、単なる基礎教育との差異化をはかれるとともに、公文式やその他のドリル等の色々な日本のアプローチをとってやっていけるものも沢山ある。また、学校運営能力の向上として、PTAの方式をとるようにした。これまで、親が子どもたちのために組織化して学校で活動するものがなかった。学校なんて行かなくてよいから働きなさいという親たちから教育し直して、教育の重要性の理解を深めるとともに、これによりコミュニティを育成し、コミュニティ開発というアプローチを展開しようとしている。
⑦アフリカの水開発
水の防衛隊(W-SAT)とは、日本の専門家(たとえば都道府県の地方公共団体で、水道関係の業務に携わってきて技術がある方等)を送ろうというものである。アフリカにおける水は非常に重要であり、それに対処するアプローチとして考案され、現在取り組んでいる。また、650万人に飲料水を提供することにも取り組んでいる。給水分野では単に掘るだけではなくて、それを維持管理するのが大変である。水をコミュニティできちんと管理しないと、無駄に使われてしまったりするので、コミュニティを作ること自体も、一つアプローチだと思う。放っておくと井戸が枯れたり、ポンプが壊れてそのままになったりする事例もあるので、そういうことが起こらないように、持続可能性を持った形で展開することに取り組んでいる。
⑧クールアース・パートナーシップ
クールアース・パートナーシップというのは自民党政権下のイニシアティブであるので、今後鳩山イニシアティブに取って代わられ、さらにスケールアップして、途上国支援をすることになる。これまでやってきたことは、日本の提唱するやり方に賛同してくれるのであれば支援するということで、パートナーシップを結び、エネルギーや水の問題、防災に関することなど様々な支援を展開していくというものである。アフリカの3分の2を超える36カ国がパートナー国ということで、賛同してくれている状態である。
■ 協力準備調査の実施
2012年までにODA倍増を達成するために、日本ならではの支援をできる案件をもっと作りたい。TICAD以降、一年ちょっとの間に130件以上の協力準備調査を行ってきた。現在も案件発掘に精一杯頑張っているところだ。
5.官民連携について
■ 官民連携:これまでの取り組み
援助と経済活動というのは、実はリンクできるもので、相乗効果をもたせることができると思う。皆さんが学んだ頃の発想では、日本のODAというのは、日本企業の輸出振興のために使われ、日本企業が利するようなODAであったという認識を持たれているかもしれない。今、中国がやっていることはまさにそうで、中国企業の海外進出を後押しするためものであり、彼らはDACに入っていないのでODAと呼べないし、どのような形態の資金の枠組みなのかは不明である。
しかし今はその逆で、日本企業に、もっとビジネス促進のために活用することを後押しする状況にあり、官民連携を積極的にやろうとしている。これは決して非難されるべきことではない。市民社会とも連携していくようなニューフロンティア型のものや、コミュニティに資する在り方等、色々な形態があるので、単に日本の企業が利するためだけに箱ものを作っているという話ではないので、そこは区別してほしい。
■ ODAを活用した民間企業との連携
途上国にも日本企業にもメリットがあり、ODAとしても公益性があるというような、win-win-winの関係というのは、目指せばできると思っている。
その連携パターンの一つとしては、周辺環境整備型というものがある。たとえば企業が工場を作りたい場合には、ハード面ではインフラ整備をして積出し等ができるようにするとか、ソフト面では制度の改善や人材育成に貢献するとか、労働者のいる地域でエイズ教育を展開するとか、そうしたやり方でサポートすることができる。
次に、PPPインフラ型というのは、アフリカではまだアドバンスすぎるかもしれないが、アジアでは段々実現してきているものである。たとえば、ハードウェアをODAで対応して、その運営を民間が行う等、分担をするものである。
次に、新たなフロンティア型というものがある。これは、CSRとの協働や、BOPビジネスとの協力、ODAでパイロット的に行ったことを更に民間が展開していくこと等がある。この、新たなフロンティア型の模索というのは、今後アフリカにおいて非常に面白いものだと思う。
■JICAと企業CSRの連携例
ガーナでのソニーのプロジェクトを紹介する。ソニーは自分のリソースを活用して、野外に大スクリーンを設置してサッカー観戦の場を作った。その結果、人々が集まり楽しい思いができると同時に、ソニーのすごさやスクリーンをアピールすることができる。更に、その場でJICAがHIV/エイズの教育のプロジェクトを展開しており、エイズ教育や検査等をすべてその場で行い、啓発教育活動を効果的に行うことができた。参加者は2.5倍増で、検査の受診者も3倍になった。こうした集客力があるところで活動をやることにより、効果が得られたという一つの例である。
他にも色々な革新的なやり方が今後展開できる。最近、モザンビークのチブトというミレニアム・ビレッジにおいて、そこでの色々な活動と、三井物産のソーラーパネルを通じての発電事業とをリンクすることが発表された。そういうやり方で社会貢献型の民間の在り方というのが出てきている。
■ BOPビジネスとは?
BOPビジネスとは、約40億人の貧困(Base of the Economic Pyramid)層を巻き込むビジネスである。社会貢献の要素が入っているが、慈善事業ではない。与えるばかりだと持続可能性がないので、ビジネスとして成り立ちながらも貧困層の生活も潤うというような、そんなビジネスの展開の在り方を探っている。
日本の例を挙げると、大阪の日本ポリグルという会社が魔法の粉を発明した。それを汚水に入れて攪拌すると、汚れが吸着して沈殿するので、ろ過するだけで安全な水が確保できる。この技術を開発して、貧困層にも普及しようとしている。
また、味の素は、ナイジェリア等でビジネスを成功させている。大きな瓶だと貧困層の人々が買うことができないので、小分けにすることによって買えるようなり、ビジネスとして普及できる余地も広がった。また、調味料に栄養素を入れることにより、社会貢献にもつながっている。
三洋電機は、ソーラーランタンのプロジェクトで今、アフリカに一生懸命入ろうとしている。アフリカには無電化の村が多く、送電線を張ってもらうのを待っていると、何十年何百年と経ってしまう。そこで、太陽電池とソーラーランタンというシンプルな仕組みで、それまで煙の出るようなランプを使っていた所に光を届けるのである。ソーラーパネルが非常に高いのだが、コミュニティでうまく充電するメカニズムを開拓すれば、圧倒的に普及する可能性がある。今はそのパイロット期で、どうやったらコストダウンしながら充電の仕組みができるのかということを研究している。
以上のような、新たな貧困層向けのビジネスの展開というのは、ビジネスの世界だけではなく、これまでの援助のノウハウ、コミュニティ開発のノウハウ等とリンクさせて、新たな視野が広がるようなものとして推進しようとしているところだ。
6.日本の現状と今後の取り組み
■ 今後の取り組み
TICAD Ⅳの各種コミットメントをバランスよく達成したい。日本ならではの支援ができるところとして厳選したので、その中でいかに具体例を作って、サクセス・ストーリーを作って、日本の顔も見えて、アフリカも日本もwin-winになれるのか、というチャレンジをしている。よって、案件発掘・形成の取り組みを根本的に強化している。アフリカは地上最後のフロンティアなのである。
■ 日本のODA予算の現状
平成9年のピーク時から、公共事業関係費や防衛関係費と比べて、ODAの減り幅は非常に大きい。また、一般会計に占めるODAは6000億円程度であり、6兆円や10兆円という規模の公共事業や社会保障費とは全く桁が違う。
■ 主要援助国と逆行する我が国の援助実績
90年代、日本はトップだったが、2000年から2001年にかけてアメリカに抜かれ、その後ドイツ、イギリス、フランスにも2007年の段階で抜かれて、今5位になっている。他の諸外国は援助を増やしてきているのに、それに逆行しているといえる。2005年と2006年が若干増えているのは、債務救済、貧困削減戦略の下にHIPCイニシアティブというものがあったためで、実績としては上がっているが、新規のお金として出たものは下降傾向にあるのが現状だ。
7.質疑応答
Q1:①南米を通じた三角協力としての日本のアフリカ支援についてお聞きしたい。
②ブラジルとの三角協力については、ブラジルに日系の人たちが沢山いることとある程度の関連があるのだろうか。
A1:①先にTICADの基本原則であるオーナーシップとパートナーシップに触れておきたい。オーナーシップというのは自助努力支援ということで、日本の援助哲学でずっとやってきたものである。旧宗主国はアフリカに対してどうしても上から目線になってしまい、一緒に発展しようという発想があまりなかったが、日本は青年海外協力隊しかり、先方のオーナーシップを尊重することをずっと重要視してきて、それをTICADの枠組みの中でも主張し続けてきた。今やオーナーシップとパートナーシップというのは援助コミュニティの中では基本原則のように言われており、欧米の国でもそういうことになっているが、本家は日本ではないかと、日本の援助関係者はずっと思っている。
次にパートナーシップについてだが、三角協力や南南協力を推進するのは次の理由による。日本はアジアでの援助に成功したが、欧米はアフリカでの援助に失敗しているので、アジアで成功した日本の秘訣をアフリカでも展開したいということ。また、日本の技術は、現在のアフリカにとって高度すぎる部分もあるので、日本の技術移転によって育ってきたアジアの途上国の技術者が出てきて、そこを通じてアフリカ支援を一緒にやろうということになる。実際に横浜行動計画には、ベトナムやタイも参画している。
更に、アフリカ・アフリカ協力といって、現在は北アフリカのエジプトやチュニジアも非常に実力と自信を得てきていて、自分たちはアフリカ大陸の一部であるので自分たちがサブサハラ・アフリカの人たちを支援できるのだと言っている。それを日本が支援してくれるのはありがたいということで、アフリカ域内の三角協力という形でも支援を行っている。
また、モザンビークとアンゴラはポルトガルが宗主国であるが、今やポルトガル語圏の国であるブラジルが新興国として非常に出てきているので、そことタイアップして、農業開発をしたり、資源開発を行ったりしようという動きもアフリカで沢山出てきている。特にブラジルのセラードという地域は、以前は荒れた土地だったが、日本が農村開発して、今や大穀倉地帯になって発展しているのだが、そのセラードでの経験をモザンビークで実現しようではないかという技術協力プロジェクトも動いている。これは、ブラジルと日本が一緒にやっていく三角協力である。
他にもタイアップできる可能性のある国としてはインドがあるが、まだそこまで具体化していないので、途上国では、アジアと北アフリカ以外ではブラジルが一番進んでいるといえる。
②日本とブラジルの関係の緊密さや幅の広さというのはそれなりに影響していると思う。ただ、ブラジルはモザンビークやアンゴラと歴史的にも関係があり、ブラジルからつれてこられた奴隷はほとんどがアンゴラからだったそうだ。また、中国が受注できるのと同じような理由で、ブラジルも建築業やサービス業や資源開発等がそうとう入っている。たとえば、ヴァレー社というブラジルの鉱山開発の会社がアンゴラ、モザンビーク等に進出しているが、そことタイアップをしながら日本企業が資源開発を進めるという流れもある。
Q2:日本の通信会社がアフリカへ進出しにくい理由は何か。KDDIがバングラデシュのブラックネットを子会社化するという動きがようやく出てきたが、そういった動きはアフリカでもあるのだろうか。
A2:日本の携帯は非常に高機能であるが、海外ではそうした高機能を欲しない人も多い。たとえばノキアは途上国において貧困層でも使いこなせるようにシンプルな機能までスペックを落とした。また、貧しくて一人で携帯を持つことができないので、一つの携帯をたとえば5人で共有し、チップを変えることで自分だけのモバイルのように使えるシステムや製品開発をした。こうした貧困層向けの商品開発に日本の会社は熱心でなかったというのが理由の一つである。
有名な社会起業家である原丈人氏は、途上国での可能性についての先見の明があり、ブラックと組んでブラックネットという事業を展開している。原氏がこれで一度成功を収めていることから、日本として親近感があるので、KDDIや丸紅等が出資を始めたのではないか。バングラデシュは、グラミンバンクの発祥の地でもあるように、マイクロファイナンスの点で非常に発展を遂げている。貧困層の人が、おなかがすいていてもとにかくコミュニケーションツールとしての携帯を買いたいくらいの勢いだということを、資金調達手段とあわせて上手く展開できたという強みがある。これまで日本には、貧困層にそこまで真剣に向き合う発想というのはなかったので、現在政府ではBOP研究会等を開催し、ビジネスチャンスがあることを発信するとともに、支援策を整えようとしている段階だ。
Q3:官民連携をして企業にアフリカへの進出を促すことについて、企業は実際に多少なりとも利潤を得られないと海外進出ができないと思うが、どのように進めていくのか。
A3:社会通念上、搾取型の投資はもう通用しないし、環境配慮をする必要があるし、人権侵害にも気をつけなければならないので、欧米企業もCSRを併せて行っている。また、労働者がたとえばエイズになってしまったら、せっかく育成をしてもどんどん亡くなってしまうので、事業の持続可能性がなくなってしまう。また、ある程度の教育レベルがないと、労働力の質は悪い。そうしたことで、CSRや人材育成の重要性というのに気付いてきたところである。
日本のアフリカ投資の代表例として、モザンビークにモザールという、イギリスのBHPという会社と日本の会社が組んでやっているアルミの工場がある。ここでは、原料はオーストラリアから持ってきて、電力は南アから買っている。GDPの数パーセントを占めるほどの影響力をもつ大きな工場で、周辺地域の保健、教育など非常に大規模なCSRを併せてやっている。そのCSRの部分に、政府資金である部分肩代わりし、コストの一部を軽減する、といったことが可能である。ただ、恣意的であってはいけないので、その地域の住民の福利厚生に役立っているということを確認した上での公的資金の投入だと思う。また、リスクをヘッジしてもらえないと危険で行けないというところがあるので、リスクを軽減するための在り方について、民間の人たちと議論しながら進めているところだ。
民間としては採算性がなければいけないのだが、今後の市場を考えると、中国がどんどん買い占めていってしまうレアメタル等を確保しなければならないという発想は皆が持っていて、時が許せば進出しようということで案件を温めているような状況である。
Q4:①日本がアフリカを支援するときにどのようなビジョンでやっているのかをお聞きしたい。今は色々なドナーと協力するようになっているが、マルチの中での日本の存在感や、日本のイニシアティブをどのように出そうとしているのか。
②私は以前ケニアに行って、理数科教育プロジェクトのSMASSEを見学させていただいた。SMASSEは日本が導入したものだが、ケニアのスタッフに聞いてみると、これは日本がやったのでもなく、JICAがやったのでもなく、自分たちがやっているものだと言っていた。それは、JICAが、ケニア政府がそのように思うように仕掛けているからだというのを知り、すばらしいと思った。おそらく日本は、オーナーシップを高めるようなやり方をとっているのだろう。しかし、外交政策であるからには、日本の存在感を示す必要もある。その兼ね合いというのをどのように捉えているか。
A4:①最近は援助のアラインメントということを言われていて、ドナー間で力を合わせて同じ方向に進むというのが趨勢である。その中で、貧困削減戦略ペーパーがあるところはそれが出来てくるし、それに似たような形で途上国がオーナーシップを持って自分の開発戦略というのをそれぞれ作ってくる。その作成にいたって、それぞれのドナーがどれだけインプットして、どれだけそれぞれのよさを出せる形で戦略がつくられるのかというところは、いわば競争のようなところがある。青写真を描くのがうまいコンサルがいっぱいいて、語学も得意な英国・北欧系のところは、やはりそういう全体像を描きたいということになる。そこで、なるべく日本もインプットはしていくのだが、ドナー協調といってもそれぞれのセクター別にミーティングが山ほどあり、それだけ人を割いていないし、向こうは各分野の専門家が出てくるのでそれに伍していくのは大変なのだが、その中で日本は、マージナライズされないように努力しながら頑張っている。その結果、日本のイニシアティブに、他のドナーの資金を引っ張ってくるようなこともできるようになった。
例えば、モザンビークやタンザニアは援助協調のメッカで、ドナーの中では財政支援に入らないのはドナーであるべからずというような勢いだったが、先方政府としては、日本のプロジェクトタイプの支援は、目に見えた実績を上げてきたので、引き続き感謝されている。農業の分野では、真面目に地べたを這って取り組んでいるドナーというのは日本以外にあまりいなかった。今は農業が大事で、食糧安全保障というのを急にやり始めたが、現場できちんと地に足をついた活動をしていないところは、お金をどう農業につけてよいのかというのが分からなくなっているのではないか。日本はたとえば、ザンビアでPaViDIA(孤立地域参加型村落開発計画)というフラグシップの案件があるのだが、農村でそれまで農家の人たちがばらばらに収穫物を売りに行って買いたたかれていたところを、村で共同活動を行い、よい品質のものはよい時に市場の情報を得た上で売るというような活動を、少しお金をあげたことによってできるようになった。その結果、相当所得がよくなり、今度は更に村で再投資して乾燥野菜を作るための太陽パネルを買おうとか、家畜を共同購入しようとかいうことになり、更に所得が上がるというような活動を支援している。これはよい支援なので、財政支援の方の農業ファンドからお金を出そうということになり、これまで日本が小規模でやっていたものをスケールアップするために、財政支援のお金が使えるようになったりした。
また、先方政府の政策立案の中枢にインプットするという意味で一つ紹介したいのは、産業支援という点で、日本がエチオピアで知的貢献という意味で最上流に関与していることである。エチオピアでは、メレス氏という非常に聡明な首相がリーダーになっているのだが、ノーベル受賞者も含めて世界の経済学者と自らが議論しながら、エチオピアという資源のない国をどうテイクオフさせるかについて産業支援戦略を研究している。アジアがあれだけ成功したので、日本に学びたいということで、今、GRIPSの大野教授夫妻をはじめとした知的総力を結集して、エチオピアの環境下において、どの産業をどう育成していけば、輸入代替から輸出までできて、所得が上げられるかということを喧々諤々やっている。
もう一つ、日本の手法として、カイゼンというのを聞いたことがあると思うが、マネジメントをきちんとやることで効率よく工場経営ができるということである。この手法をJICAの技術協力プロジェクトと併せて行って、トップでの戦略作りにアラインさせる形で、カイゼンプロジェクトをその特定の融合セクター(金属加工、皮革、アパレル等)で行うとか、農業と工業のリンクということで、農産物を輸出までもっていくために何を投入しなくてはいけないのかというところへのインプットをするとか、そんな風に上流部分でもできるところではそういうことをやりながら、日本の経験を活かしてサクセス・ストーリーを作ろうとしている。
②ケニアの現場の担当は、自分たちがやっているという自負を持ってくれるのでよいと思う。これは第二世代第三世代になったからだと思うが、はじめは日本人から学んだはずである。SMASSEは日本が始めたということはトップレベルでは知っているし、TICADのコミットメントにも書いてあり、あらゆるところで宣伝していくので、自立心がそこまでやいったということをまた宣伝すればよいのである。だから、広報の仕方次第であると思う。
Q5:さきほどから日本とアフリカのwin-winな関係ということで、アフリカの声を聞くのが非常に大事だという話をされて共感している。外務省やJICAや現地でアフリカの人たちとコミュニケーションをとって進めていく方々は、アフリカ支援をしやすいと思うが、日本の一般国民や、アフリカ援助のベースに立っていない人たちがアフリカのことを知ろうと思った時に、インターネットやマスメディアを使っても、そもそもの情報量が少ない。そうした物理的にアフリカと遠い位置にいる人たちがアフリカのことを知るために、もう少し上手い手段、ないしは政策としてアフリカと日本との情報交換の通りをよくするような改善点というのはないのだろうか。
A5:そこは私たちも非常に気にしているところだが、アフリカに関しては、報道内容がネガティブであることが多い。そうした面しか出てこないというのは、現実との大きなギャップである。アジアの国に駐在している友人から聞いたところ、たとえば香港やシンガポールの方がよほどアフリカのニュースが多いそうだ。しかし、日本のメディアに言わせると、日本人はアフリカに関心がないから、報道の量が少ないのだという話になる。そうした悪循環があるので、私は、一般受けする事象に引っ掛けてアピールしていくしかないと思っている。来年は南アでワールドカップが開催されるので、いやがおうにもアフリカへの関心が増す時期だが、残念なことに、今は南アが最も危険な犯罪国家であるという出方しかしていない。それは違うので、渡航情報を見てほしいし、大都市のある特定の地域だけは行かないようにしてもらうとか、パッケージツアーで行った方で被害にあった方はいないとか、色々アピールはしている。メディアだとどうしても誇張してしまうところがあるのだが、テレビの一般番組でも、来年のワールドカップに向けてアフリカをとり上げてくれるところが段々増えてきており、来年の企画はかなり増えると思う。1月4日の東洋経済には50~60ページを割いてアフリカ特集をやってくれるという話で、私もインタビューを受けたし、新聞社でもアフリカ特集を2カ月おきに企画しているという話も動いている。一般の人が関心を持つだろうと思うとメディアも動いてくれるので、その時に上手く、よいメッセージ、成長するアフリカというメッセージを発したい。少しずつでも努力しながら認知度アップとよいイメージづくりに努力しているので皆さんにも是非ご協力いただきたい。
Q6:①MDGsについて、進捗状況とゴール達成に順調に向かっているのかどうかを教えていただきたい。また、その中で日本はうまく自分たちの責任を果たしているといえるのだろうか。
②どのようなメッセージで伝えたら、日本人にアフリカに興味を持ってもらい、アフリカ支援やミレニアム開発目標をアピールすることができるだろうか。
A6:①リーマン・ショックの後、3月にボツワナでフォローアップ会合があったが、そのときに危惧されたのが、MDGsの観点から見ると、アフリカのサブサハラが今一番遅れているということである。資金が途上国支援に流れなくなることによって、MDGs達成が危うくなる可能性が出てくる。これはなんとしても避けなくてはいけないというメッセージを日本は強く打ち出した。その後4月にG20ロンドンサミットがあって、そこにアフリカの声をつなげ、金融経済危機にあっても日本はTICADのコミットメントは後退させず、必ず実現し、MDGsを達成する決意を示した。2008年は2015年までの折り返し地点であるので、G8サミットでもTICADにおいても、9月のMDGsの特別会合においても、折り返し地点において日本として絶対に後退させないという決意を発し続けたことはおそらく国連事務総長の方でも評価してくれていると思っている。今後も日本はそれなりの貢献をしていくことと、コミットメントは揺るがないということを引き続き表明していく。
②日本人は温かい心をもっており、自然災害が起きるとあっという間に募金が集まる。日本は津波や地震、飢餓や干ばつ等については、人の痛みを自分のものとして共感し、かわいそうだからなんとかしてあげよう、という気になる。紛争となると、途端にその想像力は薄くなるようだ。ただ、かわいそうだから、といった暗い面ばかり出してしまうと、それだけで嫌がる人も出てくるので、そこは色々なメッセージを発しながら、アフリカ開発に関与したい、MDGs達成に向けて何かしたいと思う人々を広げていくようにしていくしかないのだと思う。来年はワールドカップに向けてアフリカに行く人も増えるし、メディアもカバーするので、よいイメージをもってもらって、アフリカにもっと関与すべきだということでアフリカを理解する人が増えればなおよいと思う。また、UNHCRで難民映画祭というものを開催しているが、映像の力というのも私は信じている。悲惨な状況下でも非常に人間味あふれて力強く生きているアフリカの人々を映像で見ることによって、かわいそうだという目線だけで見ていた自分が恥ずかしくなる。そういうヒューマン・ストーリー、地に足がついたストーリーをなるべく発信していきたい。

(以上)