ミレニアム・プロミス・ジャパン(MPJ)

極度の貧困は根絶できるはずだ
私たちの孫の時代ではなく、
私たちの世代のうちに
極度の貧困は根絶できるはずだ  私たちの孫の時代ではなく、私たちの世代のうちに

ミレニアム・ビレッジ・プロジェクトに関するレポートサマリー

イギリスのOverseas Development Instituteが、ミレニアム・ビレッジ・プロジェクトに関する調査・分析レポートを発表しましたので、事務局でサマリーを翻訳しました。

http://www.odi.org.uk/resources/download/2416.pdf

(レポート原文は上記からアクセスできます)
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ミレニアム・ビレッジ・プロジェクト(以下MVP)はミレニアム開発目標達成(以下MDGs)に向けて、目覚ましい成果を遂げ、村落レベルで実証に基づいた低コストの介入に投資を増大する効果を実証した。
 MVPは村落レベルの投資を拡大する上で、上流への投資増大・農村部と都市の連結・インフラ・制度が必要であることを示唆しているが、限定的な予算の下では対策を講じることはできない。
 各国はMVPの拡大を、国家開発戦略の枠組みの中に位置づけていく必要がある。ドナーは国内でMVPを成功裏に実践し現在国家レベルに拡大する意思のある少なくとも一ヵ国に対して、特別な支援を提供するべきである。
 農村部への投資拡大はドナーによる支援の約束にかかっている。ドナーは様々な計画が垂直的に結合し、(開発戦略のなかに)適切に盛り込まれた場合に、計画及びMVPの円滑化を支援すべきである。


多くの国々は国際社会が定めたMDGsの数々の目標を期待通りに達成しておらず、こうした事態がアフリカの住民多数を含む世界中の貧しい人々に深刻な影響を及ぼしている。アフリカの農村部の住民が貧困の罠に捕らえられているとするならば、共同の取り組みを通じて、彼らは貧困から脱却し、コミュニティーは成長、発展、繁栄へと前進することができるのだろうか? MVPはこの主張を検証する意欲的な試みである。このプロジェクトはアフリカの80の村落において、極端な貧困から住民を救い出し、発展の道へと導くことを目指し、包括的な実験済みの介入(改良種子や肥料の提供、殺虫剤処理済蚊帳配布、学校給食プログラム実施など)を導入する試験的なプロジェクトを支援している。MVPの目的は、条件が不利な遠隔地の農村部コミュニティー全土において、現在約束されている支援の範囲内で、設定された十分な目標期限で、MDGsが可能であるということを実証することである。この実験の重要性は、資源をコミュニティーレベルで集約し、少なくとも初期段階において、補完的となる農村部と都市の連結(インフラや市場アクセスなど)や制度改革に向けて優先投資することにある。MVPは2006年に始動したばかりの初期段階にあるが、その手法が機能している証拠があるか、また、より適切には、MVPモデルの維持・拡大が可能であるかを検証することは時期尚早とはいえない。
 
 これらの疑問に答えるため、オープン・ソサイエティ・インスティチュート(OSI)は2008年1月に海外開発インスティチュート(ODI)に委託し、MVPの持続・拡張可能性について初期段階の検証を実施した。MVPの主要財政支援者であるOSIは、本プロジェクトが支援する村落への介入の持続可能性とアフリカ全域での同様の投資の拡張性を確保するために、その機会と課題を把握し、実現可能な道筋を明らかにすることを目指した。
 
 本検証はアフリカ大陸の異なる地域と個別の農業生態系地域から、かつ事業施行に相異あるものを代表して、エチオピア、ガーナ、マラウイ、ウガンダで実施された。検証対象として、各分野で異なる困難な問題と機会に直面している生産分野と社会分野から、それぞれ、農業と保健が選択された。信頼できる前向きな提言を作成するため、本検証プロジェクトの計画施行責任者である研究者は検証過程全体を通して綿密な情報交換をした。現地調査で得られた定性的な洞察は、二次的資料の考察により補完されている。
 四ヵ国及び二分野のみを選択したことをはじめとして、分析には制限が存在する。こうした状況を考慮せずに一般化することには注意が必要だ。さらに、本検証は、MVPの実験の初期段階で実施され、実験プロセスの全体的な活力はまだ明らかでない可能性がある。国家調査チームは全力を尽くしたが、本調査結果は限定な利害関係者が明らかにしたMVPに係る経験と認識に依存している。検証のためのデータ収集はミレニアム・ビレッジ(以下MV)内のみで実施され、MVP対象外の村落(コントロールビレッジ)では実施されていない。また、個々の介入の効果、有効性、効率性を評価する体系的な取り組みは含まれていない。
ミレニアム・ビレッジ・プロジェクト
 MVPは、ジェフリー・サックス氏率いる地球研究所の創案であり、コミュニティー主導の開発戦略を通じたMDGs達成の可能性に関して、「概念の実証」を目指す取り組みである。本実証プロジェクトは、多分野におよぶ重層的かつ包括的な方法を通じ、国連ミレニアム・プロジェクトが推奨する介入を実施することにより早期成果を収めることを目指す。本プロジェクトのネットワークは、科学・技術・運営部門の業務を様々なレベルを網羅する。各国において、高い専門技術を有するプロジェクトスタッフが、コミュニティーと政府及び地方自治体・NGO団体・政府間組織・開発専門家との連携を図る。国連開発計画(以下UNDP)事務所に勤務するMDG顧問らが、MVP政策立案者と各国政府の政策立案者の橋渡しを行う。ケニアのナイロビ及びマリのバマコ2カ所にある地域MDGセンターは、政府と他の利害関係者に対して、科学技術支援や政策支援を提供する。さらに、ニューヨークでは、地球研究所の科学者やミレニアム・プロミスの経営者のチームとUNDPが本プロジェクトの技術、運営面の調整を行う。
 MVは約5,000人が住む農村部のコミュニティーの一団から形成されている。各国のプログラムには最大11の隣接するコミュニティーからなるクラスターが含まれる。本プロジェクトは2006年6月1日に五カ年プロジェクトとして始動し、2008年初頭までにアフリカ10ヵ国14地域の80村落を網羅し、全体で約50万人を対象に施行された。
 MVPは典型的な農村部のコミュニティーで、5年~10年の期間に対して、一人あたり推定平均で年間110ドルを投じ、さらに運営費として村落住民一人あたり年間10ドルを計上する。一人あたり年間120ドルの投資のうち、60ドルはMVPが資金提供する。国及び地方自治体が30ドル、パートナー団体が20ドルを支援。村落住民10ドルを寄与。この財源の約30%は保健に、20%はインフラ整備に、20%は教育に、15%は農業と栄養に、15%は浄水、衛生、環境にそれぞれ投資される。
 MVPは自給作物から換金作物に移行する農業変革(付加価値の高い活動をともなう)が持続可能性の柱であるとし、その農業変革には、農業関連ビジネスの発展、インフラ整備、地元の制度構築などが付随すべきであると考えている。MVPは、2005年グレンイーグルス・サミットでドナーが合意した政府開発援助(ODA)倍増に関する進展を背景に、政府及び地方自治体が2011年までに全ての農村部のコミュニティーで行政サービスを拡充するよう求めている。初年度から5年度(2011年まで)の目標は、保健や教育分野の向上などMDGsの中でも非所得関連の目標を達成することである。6年度から10年度は、長期経済発展に必要なクラスターを基本とした制度確立に焦点をあてる。MVPによれば、ドナーが約束どおり援助を増額すれば、(MVPの拡大プロジェクトで計画されている)6つの具体的手法を通じてMVPの拡大は可能となるはずである。
ミレニアム・ビレッジ・プロジェクトの成果
 2006年の開始時からMVPは現地で顕著な成果を収めた。主に不利な条件が多い遠隔地の村落において、各国を代表する献身的かつ勤勉な作業チームによる複雑な試験プロジェクトの確立・人員配置・実施は非常に高く評価されている。保健、農業分野及び複数の横断的分野で、世帯及び村落レベルで大きな改善を示す証拠が顕著だ。この介入はコミュニティーに高く評価されており、様々な低コスト介入が地区(ディストリクト)へ導入され、拡大している。MVPの介入は、政府による貧困削減戦略と緊密に連携しており、(実施される戦略が異なることもあるが、)政府の戦略実行に制限がある状況下においては、これらの戦略の実施を促すものである。
 肥料及び改良種子の提供・農業普及システムの強化・天然資源管理の改善による作物生産量の目覚ましい増加は特筆すべき点である。多様な作物が栽培されるようになり、栄養面の向上と収入増につながっている。
 保健分野では、地域ヘルスワーカーの集中的な活用と専門化により目覚ましい成果が見られた。全てのMVにおいて、一般疾患に関する地元密着型の予防治療が改善し、マラリア・結核・HIV/エイズ対策が特に重点的に行われている。MVPは実施研修・スタッフ補助・物理的インフラの整備・備品の提供を通じて、医療機関及び病診連携(診療所と病院との連携)の改善強化を促した。
 相乗効果による早期の証拠が見られている。例えば、作物生産量の増大により、コミュニティーで学校給食プログラムを運営できるようになり、就学率と栄養面の向上につながった。MVPはマラリアによる負荷の軽減によって収穫時期などに成人の労働生産性が向上し、また学童の出席率の向上にもつながったことが分かった。
 MVPは主に実地訓練や能力開発を通してコミュニティー開発に投資し、政府職員を研修活動に参加させている。農業と保健の両分野で様々な能力開発や研修活動を提供している。技能・知識・そして専門知識は非常に貴重で持続性のあるメリットである。これらメリットの活用は、MDGs達成に向けて今後とも大きな貢献につながるだろう。
 村落の個人及び世帯において、介入に強い当事者意識が見られる。しかし、そうした主体的な姿勢の表れは地区(ディストリクト)、地域(リジョン)、国レベルと範囲が広がるにつれ、徐々に薄れているように見受けられる。
 MVPモデルの導入順序、導入分野、政策改革については、各利害関係者の意見や現地情勢、行政や政治の現実的状況を勘案し、複数分野で包括的介入を維持する原則を保持しながら調整がなされた。
 MDGsを達成するには、アフリカ地方経済にMVP型の介入を緊急導入することが明らかに必要である。MVPの取り組みは高く評価されてしかるべきである。特にその理由は、政府がその定めた政策を実行して、かつ効率的に様々戦略を試験的に実施することができるためである。本プロジェクトの早期成果が認められている証拠として、すでに複数の政府が既存のMV外でMVを模倣した農村部への投資支援を要請している。さらに、他の諸国も各国独自のMV設立にむけて支援を要請している。
 
 MVP指導者らは、富裕国が支援への約束を果たし、MDGs達成のためにより幅広くこうした介入に資金提供を行うよう、継続的に支援を呼びかけている。また、MVPは困難な改革の可能性を模索する技術について地球規模またはや国家レベルの政策対話を重ねている。こうしたMVPの活動は大きな称賛に値する。MVPが実験したように、介入の成功を今後とも維持、拡大できるかどうかは、ドナーが支援の約束を守るかどうかにかかっており、ドナーが支援の約束を守るのは当然である。
ミレニアム・ビレッジの持続性維持
 利害関係者は、一部の介入が、持続可能であることを認めている。例えば(土器を使った伝統的な)点滴灌漑、作付け様式、地域医療の活動計画、妊婦のための出張医療サービスなどである。これらの介入はコストが安く、政府の普及員に余計な負担を掛けないからである。しかし、必ずしもすべての介入が非常に安価で、現在の公的人員配置において実施可能なわけではない。MVPが使える資金は現在の地区(ディストリクト)予算に比して非常に豊富であり、この豊富な資金を使ってMVPは有能な部門調整者や大規模な専門家チームを雇うことが可能である。
 一方で、利害関係者はコミュニティーの会合に出席するために使われた時間等の機会費用に対する懸念を表明しており、注意が必要である。また、多数の村落住人が、(これは村落内の不平等な力関係に起因するものであるが、)プロジェクトの投入要素の分配方法(例えば、車両や製粉機等の資産の管理を巡って、)一部で社会的な分裂や不調和が定着または悪化していると、不満を述べている。さらに、次の段階へとプロジェクトを進めようとの焦りから、介入や関連プロセスの定着及び実験からの学ぶための時間を十分に確保できていない。
 MVへの投資を持続させるための条件は、以下の通りである。
(1) ドナー側は、MVPが資金提供を停止した後、直接または国家計画を通じて、60ドルを負担する用意がある。
(2) 支援受け入れ国は、プロジェクトを支援するために、一般の村落よりも、MVPにより多くの資金やより有能な人員を提供する意思と能力がある。
(3) MVPは、2011年以降のMVの維持管理のために、一人当たり年間$10から$20の追加資金を調達できる。
 受益者やその他の利害関係者が当事者となって行う介入は、「外部的」と見なされた介入よりも持続可能性が高い。今回調査した4カ国全ての村落でプロジェクトの当事者意識が強いことがわかったが、これは目に見える形で利益を享受できるからである。しかしMVPの成功・課題・問題が国家レベルで話し合われた形跡はどの国でもほとんど見られなかった。このような問題を解決するために、各国のUNDP事務局にMDG諮問職が設置されたが、必要な牽引力を有するには至っていない。
持続可能性に関する提言
長期におよぶ関与
 長期間の制度改革を言い訳にして、農村部コミュニティーヘのより必要性の高い投資を遅延させるべきではない。しかし、以下のようなケースでは、5年から10年をさらに超えた時間枠が必要である。
(1)組織開発の進展や根強い社会規範、反対勢力、男女差の問題への対処。
(2)村落のレベルを越えた能力開発。
(3)経済的な変革の促進。
(4)MVPから教訓を得て、それをもとに国家の政策やサービス提供の仕組みを調整する こと。
(5)必要な支援の動員。
統合
 企画立案、予算編成、実行、監視、および評価を網羅するMVPの運営を、政府のシステムに統合させることは、持続可能性の重要な要素の一つである。成果を確実に持続させる上で、セクター間の協働や調整が、技術的のみならず政治的にも困難な課題であることを認識する必要があり、よって地域の指導者の関与が欠かせない。
 村落の機構・ルール・手続きを強化し、政府の機構と連携させることは、統合事案の一部である。村落の機構が住民を代表し、透明性を保って、住民間の対立(これは、外国からの投資の副産物として避けられないものとなっている。)を公平に解決し、国内の上層部による支配(これも、同じく外国からの投資の副産物として避けられない。)から住民達を守るための取り組みを倍加させる必要がある。各部門に特化したプロジェクト主導の委員会が、大枠においては有用であることは多くの事例で証明されているが、このような委員会にあまり重きを置いてはいけない。当委員会は公的には認知されておらず、持続性がない可能性があり、プロジェクトに対する責任しか負わないため現場の説明責任を促すにはあまり有効ではない。
モデルの適応
 プロジェクト第二段階における指針の原則として、地域の状況を反映し地域特有のニーズに応ずるために、部門間の予算配分には柔軟性の維持が必要だ。村落への介入/投資と地区または地区以上のレベルへの介入/投資との間の調整を図らねばならない可能性がある。しかし、コミュニティーに約束したことを撤回するようなことは避けねばならない。またインフラへの投資があまりに薄く広く行われているように思われ、MVPが撤退した後、現在の村落レベルの投資が危険にさらされる恐れがある。
 MVPは、投資を持続可能なものとするための最低条件を探る必要がある。すなわち介入の適応(例えば化学肥料と有機肥料の間の異なる組み合わせ)やサービス提供の適応(例えば人員配置の質と量)、補助金のレベル、受益者の負担する間接的なコストを最低限に抑える等の条件である。2015年までに必要な支援が全て提供されるわけでないとしても、「適応したMV」を開発する実験の中で、MVPが持続可能性の条件構築において経過を監視する一連の指標を開発するのは可能であろう。
中央政府の関与
 政府は以下に対してその資源を配分することが推奨される。
(1) 政府の人員。
(2) MVPによる村落レベルの投資を補うために必要な垂直的な結合(例えば道路・市場・電力)。この垂直的な結合は、地域間の公平性への配慮と、政策実験の維持か ら得られる公共の利益との釣り合いを保ちながら、公に正当化された枠組みの中 で行われるべきだ。
MVP的介入の拡大
 MVPは農村部のコミュニティーで短期間にMDGsを達成することが可能であることを証明するために、村落レベルにその活動を集中することを選択した。一方、垂直的に統合されたモデルにおいて、持続可能な開発の実現が可能かどうかを実験することは、財政的にも人材的にも現在のMVPの限界を超えている。我々は、オープン・ソサエティ・インスティチュートやその他の個人の慈善家、ドナー、及び民間セクターに対し、現在のMVP導入国の多くに中期的な補完的投資拡大のための資金提供の検討を推奨する。
 上記に述べたように、プロジェクトの拡大は介入(例えば蚊帳)やベスト・プラクティス(例えば地域ヘルスワーカーの家庭訪問)の持続性の確保に依存している。MVPの介入は一般的に政府の政策とうまく連携が取れており、コスト効率の良い介入は国家計画の中で拡大されるべきである。農村部への投資支援を拡大するには、追加資金、支えとなる国家政策の枠組み、さらに試験的な村落モデルから学ぶことが必要である。さらにそれには、対象村落の外部的追加要因に焦点を当てる事が必要であり、その前提として支援の質と量の充実と、その支援を引き受ける能力が政府にあることが求められる。MVPは2005年から2010の間にアフリカに対する支援を倍にするという公約に向けて進展が見られることを期待しているが、最近の支援実績からこうした進展が不透明であることも認識している。
プロジェクトの拡大に関する提言
MVPモデルを基礎にした拡大
 維持可能な介入から拡張的な介入へのシフトは順を追って進められる必要がある。現地状況への適応をあまり要しない介入は、(制度変更をほとんど必要としない場合、また、多少の変更があった場合でも)、最初に拡大される必要がある。候補として最初にあがるのは、追加資金の投入なしに繰り返されてきた介入である。例えば土器を使った点滴灌漑や、余剰作物を利用した場合の学校給食プログラムである。次に着手すべき介入は、最前線で働く政府職員に対して競争力のある給与を提供し、遠隔地や困難な環境で働くための動機付けを行うことである。しかし、政府がこうした改革を受け入れ、また例えば賃金の値上げ等への対応が可能になるまでには、時間がかかるであろう。
対外志向の学習及び政策関与
 農村部開発プログラムの成功には、試験段階から一定の規模で展開されるまでに3つの段階を経て進展することが必要だ。現在、MVPは第一段階にあり、プロジェクトを効果的なものとするための学習段階にある。この段階では受益者のニーズに最もよく応え、異なる条件下でMDGsを達成するために最も貢献している介入はどれか実験し、それを特定する必要がある。第二段階もまた効果的なプロジェクトのための学習段階であり、現段階の終盤(2011年中)ごろから始まるこの段階では、特定の条件下でコスト効率の高いプログラムとするため、プログラムを簡略化し適応させ、さらに介入の実施方法を調整することに重点をおかねばならない。第3段階は拡大である。この段階では地元や地区で調達可能な人員によりプロジェクトが運営可能なように、運営手順を必要なもののみに絞り込み、さらに簡素化する必要がある。学習プロセスにおいて、3つの段階を通じ、二次的な投資および制度のうちどれがプロジェクトの成功にとって最も深刻な阻害要因になるか特定する必要がある。
 「改善されたMVP」を展開する場合は、さまざまな利害関係者の生活にプラス・マイナスの影響を及ぼす介入への資金提供やその展開による政治的帰結の管理が必要だ。根底にある利益を巡ってプロジェクトの拡大に反対するのは誰かという政治的な駆け引きを明確に理解することは、支援を奨励するだけでなく、起こり得る反対に対処するための政治的戦略を立てるのに役立つ。
 それまでの)成果を維持し、現在のクラスターレベル以上の規模にプロジェクトを拡大する為には、プロジェクトの理念や制度および構造改革の必要性を理解する国内の支援者が必要である。また、この支援者は長期にわたりプロジェクトの事案を推進することが可能で、農村部や貧困対策部門への資金援助のための働きかけが出来る人物でなくてはならない。 さらに、この支援者は開発フォーラムでの討議のみならず、さまざまな推進活動を通じて、国内で適切な手段を通じ、プロジェクトの活動を広めていかねばならない。広報活動の推進や様々な段階における政策決定者との継続的関与に関しては、概念の最終的な実証結果を待たつことなく、迅速な対応が求められる。
 介入の拡大に伴い、地域や国家レベルでこれまで以上に共同の学習機会やプロセスへの統合が必要とされるだろう。MVPは、国内外でさらなる官や民のパートナーら、(たとえば、農業関連の投入要素を扱う業者、国営の農業研究機関、医療機関など)と協働する必要がある。MVPはこうしたパートナーらとの機能的な協働関係を構築し、発展させるためにさらなる資源を必要とする。
モデル以上のものを目指して
 MVPの戦略は上流への介入要素を含んでいるが、プロジェクトの拡大にあたっては、村落レベルの介入からさらに踏み込んで、人的資源の拡大、農村部と都市の垂直的な結合の強化、組織の改善と強化への上流への投資を行うことが必要だ。
 以下の補完的な投資は、MVPの介入を持続させ、その拡大を成功させるための重要な決定要因である。
(1) プロジェクトに求められる集中力と技能レベルをもった現場スタッフの育成・訓練、配置。
(2) 農村部と都市を結ぶインフラと制度の整備(例、村落から都市へと続く道路、情報通信、発電・送電、銀行・保険制度、職業訓練施設や大学といった訓練施設や 研究所など)。
(3) 以下に関連した制度改革への継続的な支援。
 (a)  地区および村落レベルの参加型で公正かつ分権的な多部門におよぶ公共プログラムの企画立案・実施・監視をさらなる推進。
 (b) 経済成長のけん引に必要な活気のある民間セクターの出現を支援するビジネス環境の整備。
(c) 商品・金融・労働市場を改善および強化。
(d) 貧困対策の支援および小規模農家保護するための所有権確保・不平等や男女差問題への取り組みなど長期的な課題への対処。
 MVP立案者らは村落レベルの投資は大きな開発パズルの一部にすぎず、あくまでも補助的な支援をするもので他の開発パートナーによる膨大な投資を支援するものと理解している。
 これまでの経験から、多部門に及ぶ包括的な開発は規模を拡大すると、運営に手間がかかり、特に地区レベルでは政府省庁間の細かな調整が必要であり、また取引コストがかなりかかることが指摘されている。そのため、当然ながら、このような開発の規模拡大には政府組織の活用が欠かせないだろう。そして、MVPが選択した比較的ガバナンスの良好な政府においても、大幅な能力開発と組織改革が必要だ。しかし、確かにプロジェクトの成果は重要であるが、成果達成に至るまでのプロセスも重要だ。これは、企画立案、予算編成、財務管理、監視、評価を網羅する。地域レベルではこうした分野における能力はたいてい低く、専門技能を維持するのが困難あるためドナーは対策を講じねばならない。
 ドナーは、政府がMVPをモデルとして村落レベルで基本的な開発介入への投資増大を図る場合、これを支援すべきである。さらに政府とドナーはこうした投資を持続し拡大する方法を協議しなくてはならない。これにはMVPの介入や補完的な投資の適用の検討が必要だ。規模拡大に関する討議は「貧困削減戦略」討議やアフリカ全土の取り組みに連携した幅広い政策論争のなかで行われるべきだ。また市民社会の役割も重要だ。市民社会はMDGsの進展に向けて政府の説明責任を促し、プロジェクトの拡大を監視する役割を果たすべきだ。インフラへの補完的投資をプラスした村落レベルでの直接投資・地区や現場での公共部門の能力強化・制度改革のための分析的な計画をたてることは有用だ。こうした手法はMDGs達成への道筋において生じる様々な障害や資源や必要な政策改革の特定につながるだろう。政府機関の活用のみならず民間セクターの参加を通じて同様のプランを実践すれば、市民社会など利害関係者が進捗を監視するための目標値やマイルストーンの設定を促すことが可能である。
 こうした意味において、MVPの重要な役割とは特に、現在のMVへの包括的な投資計画を引き続き実施および証明していくことと同時に、国家やグローバルな政策対話に引き続き関与し、これまでの村落レベルの介入を通じて培った経験を分かち合い、MVP型の投資に限らずさまざまな補完的な介入の利点も提唱していくことにある。現在の予算の範囲内で求められたレベルの取り組みをMVPに期待するのは非現実的であり、当然ながら更なる資金調達を必要とする。
最後に
 MVPはMDGsに向けて村落レベルでの実証に基づいた低コストによる介入への投資増大の効果を実証した。このような称賛に値する試験的な計画を重要な国家政策上の実験として維持し、必要に応じて適合させていく取り組みが必要だ。 MVPは村落レベルの介入を維持し拡大するためには上流への多くの補完的な投資が必要であることも示唆しているものの、限定的な資金調達の下では、対策を講じるのは困難である。我々は、MVP型の投資を導入・拡大する意思を政府が表明した地域では、開発パートナーによる更なる財政支援を通じた援助が必要であると提唱する。こうした取り組みを「貧困削減戦略」プロセスや国家開発計画といった国家開発戦略のなかに盛り込み、その中核に位置づけるべきだ。行動より討議に時間を割くべきではないことはもちろんだが、より広範囲な政治、制度環境のなかで、注意深く見守る市民社会を取り込んでいきながら、対話と分析を継続することを基本として、こうした計画を開発・実行・監視すべきであると考える。MDGs達成に向け地域を支援することを目指す高い志をもったMVPの立案者らと歩調を合わせ、一層垂直的な結合の進んだモデルを試験的に行うことで更に多くのことを学ぶだろう。
提言のまとめ
MVPに向けて
(1) 国家レベルの対話にさらなる時間をかける。個人のコミットメントとして概念を実行に移せる地元の支援者を探す。
(2) 科学に基づいた低コストの農村部への介入を国家のMDGsや貧困対策の中核として適合させて組み込むために、国家の政策対話や計画に関与する。
(3) 政府や開発パートナーの拡大計画を支援するために、少なくとも試験的にプロジェクトを開始している国を支援する。
政府に向けて
(1 MVPから学ぶ。政府は自国で機能することは、その規模を野心的に拡大するべきだ。その場合は、垂直的な結合や農村部の投資継続に向けた制度改革を行うことに重点を置くべだ。
(2) MVP型の農村部への投資拡大の追加支援を開発パートナーに要求する。
ドナーに向けて
(1) MVP型の農村部への投資の導入や拡大の意思のある政府に関与し、支援を行う。 マリ政府が取り組む166の共同体への拡大プランは支援対象として有望である。
(2) 農村部を対象とした介入をさらに拡大していく場合は、垂直的な結合に重点を置き村落レベルの投資に必要な制度改革を行う。
(3) MVPに参加しまたは同様なプロジェクトを実施する意思のある政府に対しては、財政支援や貧困削減戦略のための政策的な対話を通じ支援する。この場合、必要な補完的投資を特定して、これを国家戦略の中に盛り込み、関連するアフリカ全土の取り組みと連携させていく。MDGs達成に向け支援受け入れ国が依存する全面的な支援の約束を守る。
(4) 刷新すべてがリスクを伴うもの、貧困という負のコストを個人や国家が被り続けている現状に対して、「行動しないというリスク」は21世紀において容認される べきではない。