ミレニアム・プロミス・ジャパン(MPJ)

極度の貧困は根絶できるはずだ
私たちの孫の時代ではなく、
私たちの世代のうちに
極度の貧困は根絶できるはずだ  私たちの孫の時代ではなく、私たちの世代のうちに

【メッセージ】J.サックス教授からのメッセージ 

ミレニアム・プロミス・ジャパン特別顧問ジェフリー・サックス教授からメッセージが届きました!JS MasterHeadshot_low
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国連で大きな関心を集める持続可能な開発目標
2015年を期限とするミレニアム開発目標(以下MDGs)と2016年から2030年(見込み)の持続的な開発目標(以下SDGs)をつなぐ架け橋となる特別なイベントが、2013年9月25日に国連総会で開催されます。このイベントでは、残り2年間のMDGsの進捗を加速するために早急にとるべき行動が検討され、同時にポスト2015年開発アジェンダを策定するためのスケジュールと外交的枠組みが設定されます。国連のプロセスは多くの人の目には複雑、あるいは不適切にさえ見えるかもしれません。しかし世界が直面している相互に関連する経済、社会、及び環境上の困難な課題の解決に向けた人類の方向転換に対する支援が、このプロセスを通じて整いつつあります。
MDGsは、所得貧困に加え、飢餓、疾病、教育の不足、基本的なインフラの欠如等、あらゆる形の極度の貧困と戦うための協調した試みとして、歴史上もっとも成功をおさめてきました。もっとも重要なことは、AIDS、結核、マラリア、農地の低収量や学校を辞めざるを得ない子供たちといった厄介な課題の解決に、MDGsが国内外の政策や専門的知識、さらに資金を集中的に投入したことで、サハラ以南のアフリカ諸国で経済が成長軌道に乗り、疾病が減ったことです。MDGsはまた以下のような施策を世界の貧困層に対して結集させました:返済不能債務の免除;新しい組織の立ち上げの奨励(例えば世界エイズ・結核・マラリア対策基金);さらに診断、医薬品、サプライチェーン、マイクロファイナンスやインフラのための新たなテクノロジーの促進。MDGsはまだ完全には達成されていませんが、富裕国も貧困国も等しく直面している戦争、世界金融危機、脱税や活力を削ぐ汚職といったハードルにも拘らず成果を上げています。
MDGsに触発された進展を背景に、2012年6月のリオプラス20国連持続可能な開発会議では、全ての国が直面する主要な課題を解決するために、参加国が包括的で持続可能な開発の枠組みに基づくグローバルな目標の採用をコミットしました。リオ地球サミットの20周年に開かれたこの会合で、政界のリーダーたちは切迫した現実に思いを巡らしました。すなわち拡大する社会的不平等と環境の急速な劣化という深刻で構造的な危機を解決しなければ、貧困との戦いの成果と何世代にも渡って得てきた経済的利益が失われるという、重大な脅威にさらされているという現実です。1992年にリオ地球サミットで採択された3つの気候に関する条約―気候変動に関する国連枠組条約、生物の多様性に関する条約、及び砂漠化に対処するための国連条約―が変革を促すような現場の行動にはつながらなかったことを、リーダーたちは認めました。極度の貧困を終わらせることを世界に向けてコミットし、同時に拡張したSDGsに社会的・環境的課題を盛り込むことでのみ、政府、企業そして市民社会に世界規模の早急な行動を促すことが出来るというのが、リーダーたちの出した結論でした。そこで彼らはMDGsに続く新たなSDGsの設定を一致して呼びかけたのです。
SDGsを実行に移す為のグローバルな交渉は複雑で、困難あるいは自滅的にさえ見えるかもしれません。国連の指導部と193の加盟国はかってない規模で協議と交渉を始め、それは2015年まで続けられます。ポスト2015年開発アジェンダに関する事務総長有識者ハイレベル・パネルや、事務総長の代理として私が率いる持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)などの様々な国際的なグループが、今後の進め方関して潘基文国連事務総長に報告書をあげています。また事務総長自身も最近、ポスト2015年開発アジェンダに関する報告書を国連総会に提出しました。これと並行して、国連加盟各国も作業部会を立ち上げて、特定のSDGsを提案し、SDGsを達成するための財政的オプションを検討し、さらにSDGsの実行・監視を監督するための国家元首や政府を長とする新たなハイレベルなフォーラムを設立しています。
交渉は継続中ではあるものの、SDGsの重要な側面に関して、既に広く同意が得られつつあります。新たに設定される目標は持続可能な開発を中心に据え、経済、社会及び環境目標を統合すべきです。最も優先すべき目標は、MDGsによって始められた全ての活動を完了させ、2030年までにあらゆる形の極度の貧困を撲滅することです。さらにSDGsは現地の事情に適合させる必要はあるものの、全ての国に適用される普遍的なものでなくてはいけません。普遍性は特に環境目標において重要ですが、富裕国は今までこの目標に関してグローバルな責任を果たしてきませんでした。新たに重要性を帯びつつある社会目標についても同じような状況がみられます。すなわち多くの富裕国では、グローバリゼーションや急速なテクノロジーの変化、さらにしばしば誤った政治の結果、社会資本が劣化し、社会の流動性も損なわれています。ポスト2015年アジェンダには、財政、テクノロジー、監視及び政治の責任等、SDGsを実現するための手段を含めるべきです。
批判的な人たちは、やるべき事が山積みになっている状況を嘲り、単にグローバルな目標を掲げるだけでは、経済的、政治的な大きな力に対して条約と同様に無力であると言います。しかし彼らは間違っています。MDGsと同様、SDGsもそのニーズと可能性に対する認識を世界規模で高めることが出来ます。世代間で温度差も見られますが、何百万人もの世界中の若者が、自らが生き残るために世界を作り変えたいと考えています。懐疑的な人たちはSDGsの持つ力を過少評価しています。SDGsには、情報、コミュニケーション、物資、さらに生物学的テクノロジーの飛躍的進歩の活用を支援し、エネルギー、水、食糧生産、さらには医療、教育、金融サービスへの普遍的なアクセスに関わる問題を解決する力があります。
大変革が起きる可能性は現実味を帯びています。新たな手法を求める力強い声が世界中から集まっています。社会や地球を救うために必要なグローバルな優先課題を若い世代が設定するのを支援するSDGsという手法を求める声です。新たな目標はまた、困難で複雑な課題を解決するために協力して行動するよう、産業界、市民社会、及び政府のリーダーたちを動かし、動機づけることができるでしょう。時間は限られており、交渉は困難で、さらに必要な信頼醸成と優先課題についての合意形成のためにやるべきことはまだたくさんあります。それでも今週国連で開かれる会合は、重要で有益な貢献を行う機会となるでしょう。Jサックス

翻訳:加藤尚美