ミレニアム・プロミス・ジャパン(MPJ)

極度の貧困は根絶できるはずだ
私たちの孫の時代ではなく、
私たちの世代のうちに
極度の貧困は根絶できるはずだ  私たちの孫の時代ではなく、私たちの世代のうちに

「ユースの会」研究会の報告

去る8月26日、タンザニアのミレニアム・ビレッジ、ムボラ(Mbola)で9週間のインターン活動を終えたジョンズ・ホプキンス大学大学院生の田中麻里さんから、ミレニアム・ビレッジにてボランティア活動を行っ体験談をお聞きしました。
 田中さんは、2008年5月にミレニアム・プロミス・ジャパン設立記念イベントもお手伝いくださり、以前からミレニアム・ビレッジ・プロジェクトに関心をお持ちでした。コロンビア大学地球研究所を通じて、タンザニアのビレッジにデータ分析インターンとして派遣されました。
 ムボラは昨年、『VERY』誌の企画で女優・藤田陽子さんも視察してくださったように、MPJとも縁の深いビレッジです。
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写真】左から、田中麻里さん、田中さんとタンザニアの子どもたち、研究会会場
【テーマ】 ミレニアム・ビレッジ・プロジェクト~ムボラでの体験を通じて
【講師】 田中麻里氏(ジョンズ・ホプスキンス大学大学院在籍中)
【日時・場所】 2009年8月26日(水) 18:30~20:00
         日本財団ビル2階 第3会議室
概要:
1.国連ミレニアム開発目標(MDGs)とは?
2.ミレニアム・ビレッジ・プロジェクト(MVP)とは?
3.MVPにおけるインターンシップについて
4.ベースライン・レポートの分析内容をピックアップ
5.MVPムボラ・クラスターにおける3年間の成果
6.ベースライン・レポート、データ分析の問題点について
7.MVPの今後の課題
 報告書は「続き」をお読みください。



1.国連ミレニアム開発目標(MDGs)とは?
国連ミレニアム開発目標とは、国連が以下の8つの項目について、2015年までに達成しようとするものである。
目標1 極度の貧困と飢餓の撲滅
目標2 普遍的初等教育の達成
目標3 ジェンダーの平等の推進と女性の地位の向上
目標4 乳幼児死亡率の削減
目標5 妊産婦の健康の改善
目標6 HIV/AIDS、マラリア、その他の疾病の蔓延防止
目標7 環境の持続可能性の確保
目標8 開発のためのグローバル・パートナーシップの推進
なお、以下のURLはUNIC(国際連合広報センター)のミレニアム開発目標のレポートのリンク先である。詳しく知りたい方はそちらをご参照いただきたい。

http://www.unic.or.jp/pdf/MDG_Report_2005.pdf

2.ミレニアム・ビレッジ・プロジェクト(MVP)とは?
ミレニアム・ビレッジ・プロジェクトでは、アフリカ10カ国、12クラスター※、80の村(ムボラの場合は15村)に5年の期間限定で、農業、基本的な健康、教育、電力・輸送・通信、安全な飲料水と衛生設備の包括的支援を行っている。これはビレッジ住民の自立支援を目的としており、最貧困の削減への努力となっている。約40万人のミレニアム・ビレッジ住民がこのプロジェクトの受益者となっている。
また、このミレニアム・ビレッジ・プロジェクトには多くの機関が携わっており、UNDP(国連開発計画)、コロンビア大学地球研究所、ミレニアム・プロミスのパートナーシップによって運営されている。もしミレニアム・ビレッジ・プロジェクトについて更に勉強してみたいという方がいらしたら、以下のミレニアム・ビレッジ・プロへジェクト全体のホームページをご参照いただきたい。

http://www.millenniumvillages.org/index.htm

※12クラスターの所在国:エチオピア、ケニア(2つ)、タンザニア、マラウイ、ルワンダ、ウガンダ、ナイジェリア(2つ)ガーナ、マリ、セネガル
3.MVPにおけるインターンシップについて
■ 概要
ミレニアム・ビレッジ・プロジェクトのインターンは、コロンビア大学地球研究所(EI)からミレニアム・ビレッジ・プロジェクトの各クラスターの実施機関であるUNDPフィールド事務所(現地事務所)に派遣される。
8週間以上という条件を満たしていれば、開始時期・期間は自分で決められるが、ほとんどは大学生、大学院生が応募するため、たいていは夏休みや冬休みの8週間といった長期休暇がとれる時期に実施されているようである。
2009年の夏期インターンは各クラスターに3~5人ずつ、計41人であった。
保健、教育、農業、インフラ、ビジネス、データなどの各セクターのアドバイザーのもと、ミレニアム・ビレッジ・プロジェクトに携わることになっている。
インターンのほとんどが各セクターでの専門知識を多少なりとも持っている大学院生で、学部生は一人だけだった。国連のインターンがほとんど無給であるように、このミレニアム・ビレッジ・プロジェクトのインターンも無給であった。
タンザニアのムボラ・クラスターには7人のインターンがいたのだが、私以外には、ヘルス・セクターを担当するインターンに医学部生、公衆衛生大学院生、農業セクターに農学部のPh.D.候補生、ビジネス・セクターにはインターンではなくMBAを取得したミレニアム・プロミス職員がいた。それぞれの専門分野を活かして各セクターで活躍するようだ。
■ 田中氏の場合
私の場合は、データ分析のインターンとしてコロンビア大学地球研究所からムボラ・クラスターの実施機関であるUNDPタボラ事務所に派遣された。期間は9週間で2009年の6月7日から8月7日までである。私がインターンに採用された理由としては、学校で統計学や計量経済学の勉強をしていたことと、STATAという統計ソフトを使えたこと等が挙げられる。なお、国連やその他の国際機関では、統計ソフトはほとんどSTATAを使っているようである。
タボラ事務所は基本的にタンザニア人職員30~40人(ドライバーも含む)で運営されている。外国人は私の他、4名のインターンと2名のミレニアム・プロミス職員の計7名であった。
オフィスは平屋の一戸建てで、一番大きな部屋がインターンルームとも呼ばれており、そこでミーティングも行われていた。パソコンは職員用のものはあるが、インターンは自分のパソコンを持ち込むことになっていた。ここにはインターネットのアクセスがあり、唯一インターネットができる場所だった。始業時間は朝の8時、終業時間は4時という驚異的な早さのため、充実した生活を送ることができた。
なお、インターンはコロンビア大学から派遣されるという形なので、やはりどうしてもコロンビア大学の大学院生が大多数を占めていた。
■ 現地での生活
UNDPの所有しているゲストハウスを、他のインターンとシェアしていた。タボラ事務所では2軒の家を所有しており、一方は4人、他方は3人でシェアをすることになっていて、私は3人の方の家に入った。インターンを始めた順に入れられていく為、選択権はない。私の場合はルームメイトがおり、コロンビア大学から来ていたアジアン・アメリカンの女性と同じ部屋をシェアしていた。
家賃は一日8000タンザニア・シリングスで、8月26日現在の為替レートでは、1円が13.9~14タンザニア・シリングスであるため、日本円で571円程度である。この1日の家賃8000タンザニア・シリングスでハウスキーパーとガードが付いて、ハウスキーパーは掃除、洗濯、食器洗い等全部をやってくれる為とても生活が楽だった。
排水設備は整っていなかったので、まず大きなバケツに水を貯めて、シャワーをするときは小さなバケツにそれを移し替えて手桶でシャワーをしていた。トイレもそのようにして流していた。ただ、タンザニアは南半球で、私が行ったときは、冬で乾期でかつ標高1200メートル位だったので朝と夜が非常に寒かった。私はフィリピンでボランティアをしたことがあり、水シャワーには慣れていたはずなのに、気温15度の中の水シャワーは非常に寒かったので、知恵をひねり、市場でやかんを買ってお湯を沸騰させてバケツの水にそのお湯を入れてからシャワーをするような形にしていた。
停電も頻繁に起こっていた。普通の停電もあったが、計画停電といって、電力が足りないために計画的に停電をして電力をセーブしていたので、計画停電と普通の停電が続いた週は、パソコンも携帯電話も充電できないため大変だった。
ゲストハウスにはもちろんインターネット接続はないので、インターネットはオフィスかネットカフェで行っていた。町に行けばネットカフェが発達していて、一時間100円位でネットをすることができた。
オフィスまでは徒歩15分だが、町で自転車を買い、それで通うインターンもいた。自転車は、おそらく90%位が日本の中古自転車で、中国製、韓国製がそれに続く。ぼろぼろの自転車だが、1万円もする。日本からタンザニアへ、タンザニアからタボラまでの輸送コストが非常に高いために自転車自体の値段が高くなってしまうのだが、自転車は必需品であり、子どもからお年寄りまで皆が乗っていた。それを見て、1万円の自転車を買う余裕はあるのだと思った。
ゲストハウスは改築したばかりだったのできれいだった。水道設備は整っていないが、キッチンには冷蔵庫も付いており、冷凍室もあるが、停電が起こるのでアイス等は買うことができなかった。部屋には、蚊帳を吊るして寝ていた。
オフィスの真横には青空レストランがあった。メニューの一例としては、メインのご飯、ホウレンソウの野菜炒めと豆のスープ、牛肉とトマトの煮込みのようなものがあった。
■ 仕事内容
主に「Baseline Report」(ベースライン・レポート)というレポート作成のお手伝いをしていた。ベースライン・レポートというのはミレニアム・ビレッジ・プロジェクト介入以前の村の生活水準を各セクター(貧困、教育、ジェンダー、保健、環境等)ごとに調査し、分析を行う報告書である。ミレニアム・ビレッジ・プロジェクトの介入がどれだけ効果的であったかということを測る中間調査であり、モニタリングの際の基準となる。まだ完成していないので具体的な内容を発表することはできないが、ミレニアム・ビレッジ・プロジェクトのホームページ上にケニアのサウリ・クラスターのベースライン・レポートが載っているので、そちらをご参照いただきたい。分析内容はほぼ同じなので、タンザニアのレポートが出た時に参考になると思う。URLは以下の通りである。

http://www.millenniumvillages.org/docs/Sauri_Baseline_Report_final_10-22-07.pdf

調査は2年前に終了しており、クリーニング済みのデータから変数などをSTATAで作成し、レポート用の表やグラフを作成し、簡単なコメントを載せるというのが私の主な仕事であった。実際に調査に行ってインタビューをするわけではない。インタビューをするには現地の言葉を話す必要があるので、それは現地の人が行っていた。
ほとんどがオフィスワークであったが、データチームの他の調査に同行したり、他のセクターの調査の手伝いなどで実際に村に行くことができた。
(例1)小学校の先生への調査では、携帯電話の教育セクターにおける役割について質問していた。質問者は二人おり、一人がメインに質問してICレコーダーのようなもので録音している。もう一人は質問した答えを書き留めていき、一時間ほどでこの役割を交代していた。
(例2)インフラ・セクターでは、製造国の違う三つの調理ストーブについて、どのストーブが一番薪の消費量が少なく、短時間で調理ができるかという実験をするために、村の一家庭にお邪魔してきた。実験の手順としては、主食であるメイズ(トウモロコシの粉)を市場で買ってきて、量を測り、実験対象の調理ストーブでお湯を沸騰させる。水の沸騰まで約1時間かかる。次に粉を入れ始めて沸騰したお湯と粉を30分から40分かけて混ぜ合わせていっていた。
質問:モザンビークの人々は自分たちでメイズを搗いていたが、タンザニアでは自分たちで搗かずに市場で買っているのか。
田中氏:地元の人たちもメイズは購入できる。町の市場ではなくて、村に近い売店で売っていた。クラスターごとにそういった点は少し違うのだと思う。ただ、豆は地元の人たちが自分で搗いていた。
メイズとお湯を混ぜたものをウガリといい、お餅のようなものだが、もち米で作るのとは違い、なかなか味に慣れることができなかった。私のルームメイトはインフラ・セクターのインターンだったので、彼女はいつもこういうことをしていたのだが、たいてい実験用に大量に作るので量が余ってしまい、そのためにいつもごちそうになっていた。いつもはウガリだけだが、お邪魔した家庭によってはおもてなしをしてくださるところもあった。
4.ベースライン・レポートの分析内容をピックアップ
まだベースライン・レポートが完成していないので、全てを具体的にお話しすることはできないが、だいたいの要約をご紹介したい。
■ ムボラのクラスター概要
ムボラ・クラスターは15村でできている。15村の人口は全部で32400人、6000世帯である。タボラからはでこぼこ道を36km、四輪駆動車で約30分、日によっては45分かかった。ムボラの標高は900mから1200m。この1200mというのは高いように思うが、マラリア蚊は標高1800mまで生きられるので、寒かったもののマラリア蚊は沢山いた。
タンザニアの商業上の首都はダルエスサラームといい、行政上の首都はドドマである。大統領や国会議員などは皆ドドマにいる。興味深いことに、ダルエスサラームからドドマまでは道が全て舗装されているのだが、ここから西は道が舗装されていない。タンザニア人に言わせると、ドドマよりも西は世界の果てだということだった。確かに、何の娯楽もなく、道も舗装されていないような状況であった。ダルエスサラームからタボラまでは、飛行機で2時間位である。タボラはかつて木炭の町だったが、今は廃れていて観光客はほぼゼロである。外国人はほぼ援助関係者か教会関係者で、宣教師一家のような人たちがいた。なお、ムボラ・クラスターの衛星写真を見ると、診療所や小学校が確認できる他、かろうじてセカンダリースクールも確認できる。
ただ、注意していただきたいのは、これはベースライン・レポートであって、今の状態を示しているわけではない。ミレニアム・ビレッジ・プロジェクトが始まる前の3年前のデータが元になっているのでその辺りはご注意いただきたい。
なお、ムボラへは道が全く舗装されていないので、四輪駆動車でないとどうしても行きづらい。私が行ったときは乾期だったのでまだ道は良かったのだが、雨期に行かれた鈴木理事長は非常に大変だったと思う。
■ 調査村概要
ベースライン・レポートでは、全部の村を調査するのは困難なので、ムボラ、ムペンゲ、イシラの3村が調査村として選ばれた。人口は6043人、1083世帯、面積は151.8㎢である。
ムボラの調査村における主要産業は農業である。メイズの生産が50%以上、落花生が15%、豆類が9%、そして換金作物としてタバコが11%ほど生産されていた。主要部族はNyamweziで、調査村の51.7%を占め、Sukumaの13.5%、Tusiの10.8%と続く。宗教はイスラム教が74.7%と最も多く、キリスト教は25%、0.3%はその他の伝統的なアニミズムのような宗教だと言われている。
言語はスワヒリ語が話されており、これはタンザニアの公用語である。その他にもスクマ語などの各部族語が話されている。タンザニア人にとってスワヒリ語は第二言語になる。各部族の言葉が第一言語として話されているのだが、だいたいのタンザニア人はスワヒリ語がネイティブなので、スワヒリ語が話せないタンザニア人はなかなか見かけない。しかし、調査に同行したときには、家庭にいる年配の女性はスクマ語しか話せないこともあった。
なお、人口調査以外は全て300世帯をランダムに抽出し、インタビュー調査を行った。調査期間は2006年9月~2007年11月13日である。
■ 貧困
2006年当時は、86.82%の村人が1日1ドル以下の生活をしていた。この数字はタンザニア全体の88.5%と比べると低くはなっているが、それでも高い数字といえると思う。
調査村は農業をメインとしているが、収入については、農業から得られる収入(41.9%)よりも、非農業(工場で働く等)から得られる収入(47.1%)の方が上回っていた。また、村から出て他の町で働いている人たちからの送金が5.9%であった。
■ 初等教育
調査村における初等教育入学率は79.7%で、タンザニア全体の98%よりは低い数字になっている。
15歳から24歳の識字率は78.7%。男性が79.9%、女性は77.6%である。この数字はタンザニア全体の77.5%より高い。
■ ジェンダー
調査村における初等教育入学の男女比は1:1である。ただし、女児の方が家の手伝いをすることが多く、男児に比べ自宅で勉強する時間が短いということが分析されていた。
また、男性優位社会なので、未だに一夫多妻制が採用されている。現地の機関における女性リーダーの割合は3割ほどで、まだまだ男性優位の文化であった。
■ 乳幼児死亡率
5歳以下の乳幼児死亡の割合は1000人中74人で、タンザニア全体の割合(1000人中112人)よりも低いが、これも高い数値であるといえる。乳児死亡の割合は1000人中40人。
タンザニアの国家キャンペーンにより86%の1歳児は、はしかの予防接種を受けていた。
■ 母子保健
15歳から49歳までの女性の避妊方法については、モダン・メソッドが45.74%であり、ここの村のモダン・メソッドはほぼコンドームとなっていた。そして、他のメソッドというのは女性のリズムを使う伝統的な方法で、34.38%であった。全く避妊をしないという割合も19.87%と多い。
出産時のタイプ別医療関係者の割合は、衛生設備の整った病院でお医者さんに診てもらった人が20.75%、産婆さんや助産師さんに診てもらった人が53.46%、伝統的産婆(Traditional Birth Attendant)は20.13%、伝統的な産婆さんがトレーニングを受けた場合(Trained Birth Attendant)は5.66%、そして家族や親戚、友人と続く。
■ マラリア・HIV/AIDS
HIV/AIDS(エイズ)の割合は2.6%、妊娠中女性のエイズの割合は4.6%で、タンザニアとしては、エイズ感染率はそこまで高くない。しかし、マラリアの感染率は平均16%となっている。タンザニアに限って言えば、エイズよりマラリアの感染の方が深刻だと思う。というのも、マラリア蚊はとても強くて、私がいた村の人たちは年に1~2回くらいかかってしまっていた。大人になればなるほど強くなっていくので、30歳位の人がかかった場合には風邪程度の症状であった。私がいた9週間の間にも、職員さんが5人位マラリアにかかっていたが、それでもオフィスに来ていたので、そこまで深刻にはなっていない。しかし、5歳以下の子どもたちが感染してしまう場合は、死に至る危険性が高いので深刻な問題だと思う。
■ 安全な水・基本衛生
水へのアクセスは、雨期は雨水を小さな容器に貯めるという方法で水を集めているのが79%。乾期は共用井戸から水を集めるというのが93%であった。
衛生設備(トイレ)については、トイレ(和式)が家庭にあるのが31.4%で、他は草むら(11.8%)、穴(47.3%)という形で、ハンドルをひねって流すフラッシュ・トイレがある家はなかった。
質問:和式というのは穴が下にあるのか。
田中氏:足場があって、穴がある。トイレも囲まれているので、ただの穴と区別している。
■ コミュニケーション
31.4%の住民が過去1年以内に電話を使用していた。そのうち20.4%は月に1回以上電話を使用していた。
44.9%の住民は過去1年以内にテレビもしくはラジオを使用していた。ここでいうテレビ・ラジオの場合、ほとんどがラジオだと思われる。タンザニア人は音楽を聴くのがとても好きなので、よくラジオを聞いていたという印象がある。
質問:電話とは、固定電話のことか。
田中氏:村の区役所のようなところにあるのは固定電話である。また、携帯電話を持っている人も何人かおり、そういう人が平均を上げているという可能性がある。
5.MVPムボラ・クラスターにおける3年間の成果
■ 農業
換金作物としてひまわり栽培(ひまわりの種から油を採る)を導入した。これは住民の換金作物へのオプションを増やしたという成果につながっている。それまではたばこ栽培のみだったが、現在は禁煙ブームが広がりつつある。ひまわりの栽培は、タンザニアの気候によくあっていたのでこのひまわり栽培は今後も拡大していこうという話をしている。そして、ひまわりを栽培するだけではなく、ひまわりの油を採る工場を作り、今後はそれを輸出していこうという取り組みもみられる。
また、ムボラ・クラスターでは養蜂を伝統的にしている人たちが比較的多く、その人たちに対してそれをもっとスケールアップできるような支援を行っていた。
■ 教育
初等教育の通学率は、60%(2006年)から96%(2008年)となった。
また、初等教育の入学率は、80%(2006年)から、98%(2009年)に増加していた。
この大きな要因の一つとして、クラスター内の全17小学校に給食制度が導入されたことが挙げられる。この給食制度は日本政府が支援したもので、現在は8100人の児童の昼食を確保している。
また、小学校の施設建設を行い、教室や給食室等を建てたり、教科書や机の提供を行った。
質問:通学率が60%から96%に急激に上がっているが、どういうことが行われたのか。
田中氏:給食制度の導入が大きく影響している。無料で昼食が確保できるため食費が浮くというのと、子どもたちに栄養が行きわたるというのが要因となったと言われている。
質問:小学校を出た後、次の学校にほとんど行っていないが、初等教育が終わった後の職業について、変化はあったのか?
鈴木理事長:サックス教授が、給食は日本の伝統的な方法でありすばらしいとフィナンシャル・タイムズへ投稿した記事の中でほめてくださった。私が今年モザンビークの村に行った際には、人々は午前11時過ぎに朝食を食べていた。1日3食を食べられないために、お昼が一日の一食目となるのである。それを学校給食が出してくれるということは、非常に意味のあることだということが分かった。以前、ケニアのサウリ村で給食を食べてきたが、グランドの地べたにとても大きなドラム缶を置いて、そこからただ豆とキャベツを茹でたものとバナナだけを配っていたが、皆それを山盛り食べていて、それでかなりタンパク質を補っているようだった。私の記憶が正しければ、サウリ村のその小学校は周辺地域で約180校がある中で成績が最後の方だったのが、約2年後にはトップクラスに上がった。皆が学校に来るようになったのである。以前、講演をしてくださった田瀬和夫氏もおっしゃっていたように、学校給食は一つでいくつもの効果が期待できる非常に意味のあることなのである。
就学率については、一般的にアフリカのサブサハラ地域の就学率は、小学校は半分くらい、中学校に行けるのは4分の1程度である。タボラというのは一つ特色があり、もともとはドイツ軍が入っていた所らしい。そのため、教育が進んでいて、ここの女子学校や中学校が有名だ聴いている。おそらく、一般的な目で見てもここの就学率はもともと少し高かったと言える。
中学校への進学率が悪いという点については、ちょうど先月サックス教授と話をしてきたところで、今このプロジェクトに欠けているところなので、ミレニアム・プロミス・ジャパンは今後できればその点を集中的に支援したいと思っている。
田中氏:中学校に上がるには、国家試験を受けなければならない。中学校から義務教育でなくなることと、女の子の方が家の手伝いをさせられるので小学校の間なかなか勉強できず試験に落ちてしまう子も多くいるということが要因のようだ。
質問:誰でも中学校に入れるということではないのか。
田中氏:ある程度の成績を修めないと就学ができないということになっている。
質問:初等教育は有料か。
田中氏:無料である。タンザニアは7年間の初等教育が保障されているが、日本と違うのは何歳から始めても良いという点である。4年生のクラスに行った時も、一番小さい子は日本人と同じ位の9歳~10歳位であったが、最年長では16歳という子がいた。
質問:給食は誰が作るのか。
田中氏:給食を専門に作る人たちがいて、それも村の雇用につながっている。
質問:給食は日本政府の支援を得ているという話だったが、今後はどうしていくのかという点をお聞きしたい。ミレニアム・ビレッジ・プロジェクトは住民たちの自立を支援していくということから、給食についても援助に頼らずに自主財源でやっていくことになると思うのだが、そういった展望や計画はどうなっているのか。
鈴木理事長:農業支援をする際にまずは種や肥料を提供するのだが、翌年に収穫が2倍や3倍になった場合に約10%を学校給食に提供するという契約を結ぶ。よって、かなりの部分を、村の人たちの収穫の中から学校給食にしている。
質問:村の人は収穫を学校に提供する代わりに、お金をもらっているのか。
鈴木理事長:最初に種や肥料を無償でもらっているので、収穫が増えた分の約10%を無料で提供するという契約になっている。また、増えた収穫物については、倉庫を作り、それを売ることができるようになり、徐々に自立できる方向に向かっている。
質問:さきほど初等教育は無料とおっしゃっていたが、退学率というのはあるか。
田中氏:退学率はベースライン・レポートでも調べていない。
質問:たとえば東アジアの国では、初等教育の入学率はとても高いが、退学率もとても高い。そのように、数字でごまかされているパターンもあるのではないか。
鈴木理事長:現段階では、データの精査が完了していないため、具体的な数字を発表することはできないが、先日ケニアで行われた全体会議での発表によると、就学率はほぼミレニアム開発目標を達成できたと聴いている。ただし、全体的にみてアフリカでは辞めている人もたくさんいる状態である。
■ 保健
診療所における出産は14.7%(2006年)から45.4%(2008年)になり、診療所の新設は2軒、改築は3軒行われた。コミュニティー・ヘルス・ワーカーの雇用は34人。そのほか、マラリア簡易検査キッドの導入や、35400の蚊帳の配布というのが成果となっている。
質問:マラリア対策の他に、エイズについての対策や支援、成果はどうなっているか。
鈴木理事長:セネガルでは、字が読めない人がいるので、村人が寸劇のようなことをやって、蚊帳の必要性について教えていた。去年タボラに行ったアメリカ人医学生の話では、蒸し暑い所に扇風機もないのに蚊帳を使えと言っても教えなければなかなか使ってもらえないと言っていたので、こうした活動は重要である。いずれにせよ、マラリアについては、蚊帳の使用により大部分を抑える成果を出すことができる。
しかし、エイズにかかった人はまだ差別されており、エイズの問題は隠されてしまっていて、外から見た人が介入しづらい。よって、ミレニアム・プロジェクトでは、エイズの問題は非常に重要ではあるが、まずは取り組みやすいマラリア対策から重点的に行っている。なお、今はビル&メリンダ・ゲイツ財団などからの援助でエイズや公衆衛生の対策は行っているようである。
田中氏:私が知っているエイズや感染症に関する対策は、目に見える範囲では、コンドーム配布が行われていた。
■ 衛生
安全な水へのアクセスが向上した。井戸の改修や、92.5%の世帯と4小学校に清浄器の提供を行った。公衆トイレが26.5%から54.3%に増加したが、これは換気扇付きのトイレであり、各小学校に一つ、診療所に各二つずつ設置した。
6.ベースライン・レポート、データ分析の問題点について
■ 「西洋的」な質問内容
調査における質問内容が、ムボラの文化にあてはまらないことがとても多かった。住民が正確に答えたり、正直に答えることが難しい質問内容だと思った。
(例1)乳幼児死亡率について。母親が子どもの生年月日を正確に把握していない。あなたのお子さんはいつ生まれたのかと聞いても、2~3年前の8月、というような回答をしているようだ。よって、1~2歳のブレがある可能性がある。また、月を覚えていても日にちを全く把握していないので、8月に生まれた子は皆8月1日生まれになってしまう。乳幼児死亡率を測る場合、0歳の0日目から30日目までにどれだけ亡くなったかということや、1カ月目から2カ月目、という期間で区切らなければならないが、母親の記憶があいまいなので、正確な乳幼児死亡率が出ていないと思う。その対策として、今JICA等が各地で取り組んでいるように、母子手帳を普及させたらよいのではないかという提案をしてきた。母子手帳があれば、生年月日の記録や出生記録、今まで受けてきた予防接種の記録を取ることができるほか、母親が子どもの健康状態を常に記録できる。
(例2)男性優位の社会なので、ジェンダーに関する質問に女性が正直に答えられるか疑問だと思った。たとえば、夫からセックスを強要されているかという質問があったが、現地の人たちは果たしてそれを強要だと思うのか疑問に思った。
⇒以上のことから、質問を作成する際に、文化的側面を考慮しなければいけないと思った。
■ 翻訳
調査の質問票は全てニューヨークのコロンビア大学の人たちが英語で作成している。それを現地のニューモレーター(現地語と英語が話せるインタビューアー)がその場で訳している。そのため、ニューモレーターの訳し方によっては、翻訳を間違えたり、作成者の意図と若干ずれた回答を得る可能性があると感じた。
⇒スワヒリ語のネイティブがニューヨークにいると思うので、スワヒリ語を話せて英語もきちんと理解できるという人とともに、質問票を作成するべきではないかと思う。
■ 一貫性のない質問
ニューヨークの要求するベースライン・レポートの項目と調査における質問内容が一貫していないという問題もあった。
(例1)ベースライン・レポートで重要な分析項目も、2年前の調査で質問していないから分析できない。
(例2)ベースライン・レポートでは全く使用しない項目の質問まで調査で行っていたので、調査自体が非常に長くなり、住民が集中して答えにくいという環境が生まれていたと思う。私が同行した調査では、学校の先生へのインタビューが2時間ほど続いた。2時間も続くと先生方も最後の方は疲れてしまうので、本当に必要でない質問事項は極力避けた方が良いと思った。
⇒ニューヨークは質問票を作成する前にベースライン・レポートで何を分析したいか先に決めてから質問票を作ってほしい。
■ 記入ミス
現地のニューモレーターたちは国連の職員ではない。国連の職員の人たちが調査の時に一時的に雇っており、トレーニングをそこまできちんと受けていないため、記入ミスが多かった。その場合、そのデータを分析からはずす必要があり、それが多いとサンプルサイズを減少させてしまい、村の実状を正確に表した分析ができなくなってしまう。
⇒ニューモレーターの訓練を行い、ダブル・チェックの機能を強化してほしいと報告した。
■ 「時間」
ベースライン・レポートは2年前に調査済みだが、未だに完成していない。締切が今年の10月に延長されてしまった。ミレニアム・ビレッジの効果がどのくらいあったかを測る中間調査が今年の9月から始まるのだが、それにも関らず、ベースライン・レポートの分析ができていないので、これでは正確なモニタリングやインパクト評価ができるのかが疑問だと思った。また、2年前の調査なので、たとえ記入ミスが見つかったとしても、村の状態も変わっているので再調査することは不可能である。
⇒今後の調査レポートの締切を調査終了から長くとも1年以内に設定する。
⇒全てのプロセスに対して厳密なスケジュールを立て、締切の厳守を徹底させる。
7.ミレニアム・ビレッジ・プロジェクトの今後の課題
■ ミレニアム・ビレッジと周辺の村との関係
日本のNGOから派遣されてきた助産師さんの話では、他の村の人からミレニアム・ビレッジ・プロジェクトが羨ましがられているということだった。ミレニアム・ビレッジの住民と他の村の人たちの関係についても考えなければならないと思った。
■ ビジネス・セクターの人手不足
ビジネス・セクターが非常に今、人手不足に陥っているそうだ。ビジネス・セクターで働いているミレニアム・プロミス職員のアメリカ人MBAホルダーは、チャリティとしての側面がどうしても大きくなってしまうために、なかなかビジネスとして確立しないと言っていた。マイクロ・ファイナンスのようなことをやっているのだが、ローンを回収する際にも、現在ビジネス・セクターには彼女を含めて3人しかいない。よって一人一人に対して回収の催促をするのが難しく、ローンを返すのが少し滞っているようだった。
■ 村のニーズの把握
村のニーズの把握をもっと徹底的にやらなければならないと思った。ヘルス・セクターから聞いた話では遠隔診断をやりたいということだったが、村の人たち、特に女性の場合は、外国人に対しておなかを見せるというようなことを躊躇する傾向にある。遠隔診断というのは、村の診療所と大病院をスカイプのようなものでつないで、コンピュータの前で診断するというものだが、村の人たちは生身の人間でさえ抵抗があるのに、コンピュータを前にしてどこの誰とも知らない人たちに見られるのはもっと抵抗があるのではないかと思った。よって、遠隔診療をする経費があるのなら、ヘルス・ワーカー等をもっとトレーニングした方がよいのではないかと思った。
■ 援助慣れ
これ以降はミレニアム・ビレッジ・プロジェクトのみの問題ではなくて、タンザニア全体の問題であるが、人々が非常に援助慣れしている。村の人たちはリップサービスが上手くて、欧米から来ているドナーの心を打つことを毎回演説する。援助慣れというのは、ずっと援助に頼ってしまって自分たちから発展していこうという気力をそがれている状態なので、たとえばミレニアム・ビレッジ・プロジェクトが終わって、後に村の人たちが本当に自立していくためには、援助慣れをなくさない限り無理なのではないかと思った。
■ 文化変容(蚊帳)
その地に何百年と受け継がれてきた生活様式を、西洋からのプロジェクトによって少しでも変えてしまうのは本当に大変なのだと実感した。前述の助産師さんから聞いた話では、蚊帳はとても多くの村で配布されている。ミレニアム・ビレッジ・プロジェクトのみならず、他の村に対しても外国政府や国際機関やNGOが毎年のようにマラリア撲滅蚊帳無料配布キャンペーンを行っているので、村人たちの蚊帳の受給率はおそらく300%位だと思う。ただ、その使用率は誰も測ったことがない。ミレニアム・ビレッジではなく他の村の話だが、蚊帳がニワトリにかけられていたり、沿岸地域では漁業用の網に使われていたり、たまった蚊帳を村で売って現金収入にしているという話を聞いた。その人たちは、決してマラリアの怖さを知らないわけではない。しかし、それでも蚊帳を使わないのは、マラリアが10年20年前に始まった問題ではなくて、その地に長くあった病気であり、多産の文化なので一人くらい子どもがマラリアで亡くなっても仕方がないという考えもあるのではないか。また、大人になればそれほど深刻ではないこともあり、そうした考えを変えていくのは、本当に難しいことだと実感した。
■ インフラ整備
タンザニアは他のアフリカの国々と違って内戦もなく、政治的には非常に安定している。それでも、なかなか発展していかないというのはインフラ整備によるところが多いと思う。JETROのレポートでは、東アフリカに日本企業が進出する際に一番のネックになっているのはインフラだと言われている。前述のように、ドドマより西は舗装されていないが、舗装されていない道路は非常に危険で、トラックやバスの横転事故が頻発しており、輸送コストも高くなってしまう。そんな状況の中でタンザニア国内の流通を活性化させていくというのはかなり無理な状況で、それが問題だと思った。
8.質疑応答
質問:ミレニアム・ビレッジ・プロジェクトは包括支援ということだが、5年間の支援が終わった後に、それを継続していけるような現地の管理者の育成というのはされているか。
鈴木理事長:それは先日の全体会議でも問題になっていた。プロジェクトでは援助の期間を5年と定め、その後自立するようにしているが、それははじめから援助だけに頼らないようにするためであった。やはり5年ではなかなか難しいので、延長してさらに5年間、プロジェクトを延ばしつつある。すでに援助の比率ははらしつつあるが、延長する5年間ではさらに自立に無勝手、、援助の比率を大幅に減らす。
質問:たとえば村の中で全体をコーディネートするような身分や役割の人たちがいると思うが、そういう人たちがプランニングに関わったり、今の評価に関わるようなことはあるのか。
鈴木理事長:ミレニアム・ビレッジ・プロジェクトではその国の首都にナショナル・アドバイザーがいてUNDPと契約している。現地にいるのは、UNDPと契約している方がほとんどで、教育担当、IT担当、農業担当など、だいたいがPh.D.を持った現地出身(あるいはタンザニア出身)の方である。その人たちが非常に精力的に働いているので、私の印象ではおそらく10年たった後も彼らが何らかの関わりもっていくだろうという希望的観測をもっている。
質問:データの分析の問題として、時間の話をされていたが、プロジェクト自体の管理の問題があるのではないかと思うが、具体的にどういう管理の体制なのか。
田中氏:ニューヨークとタボラのデータチームが縦につながっており、ニューヨークが基本的に管理をしている。まず、調査とインタビューでパソコンに実際にデータ入力するところまではタボラチームが行う。タボラチームが分析したものを、ニューヨークに送る。ニューヨークで彼らがデータクリーニングして、最後にまたタボラチームに戻して、きれいなデータをSTATAで分析してグラフにしたり表にしたりする。こうして作った表を、各セクターのコーディネーターに回してコメントをつけてもらう。その管理自体はあまり厳しくないと思う。というのも、私が来た時もベースライン・レポートの締切は9月だと言われていて、それが10月まで延ばされてしまった。
ニューヨーク側のデータチームはそれほど大きいわけではない。彼らはタンザニアだけではなくて他の12クラスター全部のデータ精査のようなことを行っているので、一つの村に対してそれほど密につながっているわけではなく、一人で何クラスターも担当している。また、タンザニア・クラスターの方でも、データ入力自体が日本人の感覚からいうとそれほど速くない。残業をしない文化なので4時になったら帰るので、わりとゆっくりしている。
質問:ニューヨークでのデータ整理はUNDP等が雇った人が専属なのか。
田中氏:コロンビア大学の研究員である。
質問:調査で得られたデータはとても貴重なものなので、外に出せない部分もあるのかもしれないが、これを使って分析したいという人は沢山いるのではないか。たとえば、情報を共有するかわりに、データクリーニングを依頼するような提携等は考えられないのか。
田中氏:データを外に出すことは禁止されており、インターンが始まる前に、トレーニング(個人情報保護法に関するモラルテストのようなもの等)を受けさせられた。
鈴木理事長:データを出さないのではなく、2010年に、全てのクラスターのデータを1冊にまとめて厚い本にして出版する計画がある。今のタイミングで外に出さないのは、まだ正式になる前の不確定なデータを出されてしまうことによって、ミレニアム・ビレッジ・プロジェクトの信用性を失うことを恐れているではないか。また、個人情報の問題や村の文化のことを考慮してのことである。
村の文化については、私たちが今年3月に滞在したモザンビークの村では、一夫多妻制で二人の奥さんがいたが、30代の人が一人目の奥さんで、二人目の人はそれより10歳程度若かった。最初の奥さんが、二人目の奥さんを自分の妹だと紹介したがそれは正確ではなかった。また、ケニアのマサイに行ったときには、牛10頭と一人の奥さんを取り換え、1年に1頭ずつ貯めていくから次の奥さんは10歳若い人だという話だった。たとえば夫が60歳のときには一番若い妻は10代である。まだそのような文化が残っている。
質問:現地の人々に今回のプロジェクトに協力したいという雰囲気がどのくらいあったのか。また、現地の人たちは、世界にどんな国があって、どんな暮らしをしているのかという情報を知る手段があるのか、知っているのかという二点をお聞きしたい。
田中氏:私が見た印象では、現地の人たちはやはり自分たちの村を良くしようとは思っている。そのために、自分は頑張っているから援助をいっぱいしてくださいというアピールに向かうのだと思う。しかし、日本人基準からみると、それだけ頑張っているかというのには少し疑問を感じた。ただし、それはアフリカンペースなのでなかなか変えることはできないし、また変えようと思うのはこちらのエゴなのではないかと思ったりもした。
現地の人たちが世界の流れをどのように知っているかについては、町に行けばラジオも聞けるしテレビもどこかの飲食店に入れば見られるので、だいたいニュース等は知っていると思う。国営放送は一つあり、海外ニュースもやっていた。国会中継もよくやっているので、国会でどういうことが話されているのかというのもラジオやテレビさえあれば知ることができると思う。
質問:調査が2年前に終了しているのに、データの分析がまだ終わらないということについて、なぜそれほど時間がかかるのか。最初の入力の工程に時間がかかってしまっているのではないか。
田中氏:おそらくその通りだと思う。データ入力の時には私は現地にいなかったが、農業セクターのデータで未エントリーのものがあったため、そのデータ分析をした際に、2年前に調査済みの農業セクターのデータを300世帯分入れたことがある。私の他に二人、職員の方が手伝ってくれたが、私がだいたい5分の4位をやって、彼らが5分の1を二人でやっていた位、ペースが違った。後で確認をするとその5分の1も間違っていたので、結局それも私が入れ直した。私が特別データエントリーが速いわけではないので、現地の人たちのペースはかなり遅いと思う。
質問:データ入力の工程に人員を投入したらあっという間に期間が短くなると思うが、その問題がわかっていてなぜそれを放置しているのか。
田中氏:それを指摘する人がいなかったというのが大きいと思う。おそらく、外部の人がデータチームに関わって、データ入力の時間が遅いと言ったのはたぶん私が初めてだったと思う。
鈴木理事長:インターンが現地に行き始めたのが最近であり、昨年11月にMPJが日本に招いたコロンビア大学の医学生がほぼ最初のインターンではないか。コロンビア大学の単位が貰えるコースとして始まったのはおそらく今年からである。今回、田中氏がとても良いレポートを出してくれたので、来月サックス教授にお会いする時に渡してくる予定である。私も今回、エチオピアに行って驚いたのが、紙のデータが壁二つ分位ダンボールで山積みになっていた。ニューヨークのミレニアム・プロミスのチェアマンと一緒に行ったのだが、皆がこの事態に気付いてこれから動き出すところだろう。
質問:携帯電話の教育セクターにおける役割についてお話があったが、携帯電話が国全体でどのくらい普及しているのか。また、携帯電話の教育における役割というのは実際にはどういうことか。それに対して、ミレニアム・ビレッジ・プロジェクトがどんな提案をしたり、支援をしているのか。
田中氏:携帯電話の普及率に関しては、私が住んでいた町では、ほぼ70%位の割合で普及していた。というのも、町にいる人たちは全員携帯電話を持っているように見えて、新しい機種を持っている人も多かった。町にいる人たちは携帯がないとビジネスが成り立たない。たとえば、水を運ぶ水屋さんという人たちがいるのだが、私が家の水が無くなった際には水屋さんの携帯に連絡をしていた。村の場合も、村から町まで携帯を充電しにくる携帯の運び屋さんというのがいるくらいなので、わりと普及しているのではないかと思う。
教育セクターにおける役割と言うのは、まだ調査中なので詳しくはわからないが、児童に何かあったときなどに診療所のヘルス・ワーカーにコンタクトをとる等の救急的な形で使っている印象を受けた。ミレニアム・ビレッジ・プロジェクトの携帯支援については、一人のインターンがコミュニティー・ヘルス・ワーカーに携帯のシムカードを配るというプロジェクトを進めていた。
鈴木理事長:ソニー・エリクソンのエリクソンがかなり入り込んでおり、ドナーとしての活動の他、ビジネスも進めている。
質問:色々な問題について、国際機関が非常に動いているのだと思うが、タンザニア政府としては何か動いているのか。
鈴木理事長:タンザニアに限らず、マラウイや他の国々で、大統領がこのプロジェクトを国中に広めたいとリクエストしている。しかし、皆、なるべく外国からの支援を持ってきてほしいと考えている。
周辺の村との関係については、私たちが行ったモザンビークでも、周辺の村の人から妬きもちをやかれることがあると聞いた。それは十分理解しているので、将来的には、今の点のような支援を全体的に広めていきたい。そのためにはお金が足りないから、国際社会の約束通り先進諸国はDGIの0.7%を援助してほしいというのが単純にいえばサックス教授のセオリーである。
なお、それに対する反発もあって、ダンビサ・モヨ氏のいう『DEAD AID』のように、援助してもそれは政治家のポケットに入ってしまい、むしろ国民の自立する意思をそいでしまうという主張もある。サックス教授は、そういうことも今まであったが、ミレニアム・ビレッジは全て直接支援を行うプロジェクトであるし、実際にルワンダは大成功したが、その大部分は外国投資あるいは支援から来ているということを言っている。
質問:ニューモレーターの方が最初に調査するときに携帯端末で入力すれば、データ入力の必要もないし、入力ミスもないのではないか。
田中氏:報告書でそれを提案したが、現段階としては紙と鉛筆を使った伝統的な調査の仕方というのがとられている。おそらく、先進的な機械を使うと、ニューモレーターたちにトレーニングしなければならないし、機械を購入するためのコストがかかる等の問題もあるのだと思う。

以上