ミレニアム・プロミス・ジャパン(MPJ)

極度の貧困は根絶できるはずだ
私たちの孫の時代ではなく、
私たちの世代のうちに
極度の貧困は根絶できるはずだ  私たちの孫の時代ではなく、私たちの世代のうちに

マラウィのビレッジより 最新の活動レポートが届きました!(第7回)

第7回目の今回は、山本光恵さんからのレポート第3弾をご紹介いたします。

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図書館運営の研修
私の地域発展インターン生としての役割の一つがコミュニティーセンター(CC)を担うボランティアメンバーの能力開発のための研修がある。内容によっては研修教材の準備や進行を担当する。今日グムリラ村CCでは図書館運営の研修が行われた。
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写真:ファシリテーターのヘンリーさん
今回のファシリテーターは、全国市民教育計画で地方市民教育員補をされているヘンリーさんとコーディネータのマクレアーさん。私の仕事は、この研修の予算作成、ファシリテーターとの打ち合わせ、彼等を送迎する車の手配、フリップチャートやマーカー等の文具の確保、昼食と休憩時に必要な飲食物の用意、昼食を調理するコミュニティーメンバーとの打ち合わせ、研修内容の記録等、多岐にわたる。
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写真:研修の様子
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写真:昼食を調理してくれたボランティアの女性
「どのような図書館にしたいか」というヘンリーさんの問いかけに、瞳を輝かせ意見を述べるCCボランティア。
「地方新聞に載っている求人広告や、青少年を対象とする様々な催しや機会を掲示してみるのはどうか?」
「村を回って読み終わった本や使われていない本を寄付してもらおう!」
「保健ボランティアと協力してHIV/AIDSに関する情報や冊子をまとめることもできるのでは?」
このCCボランティアの姿に接し、MVPチームが撤退した後もCCは確実に発展するだろうという期待と安心感に満たされた一日でした。
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写真:コミュニティーメンバーと山本光恵さん(左端)

以上

マラウィのビレッジより 最新の活動レポートが届きました!(第6回)

第6回目の今回は、唐須史嗣さんからのレポート第3弾をご紹介いたします。

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2010年7月28日(水):写真現像の値段
村で出会った人に撮った写真を持って行くと心から喜んでくれるので、出来るかぎり写した写真は現像し、渡すようにしている。だがマラウィで写真を現像するのは安くない。標準の10センチx15センチの写真1枚で100クワチャ(約60円)が相場だ。しかも画質は決してよいとは言えない。
現像写真.jpg
[不思議と現像した写真をデジカメでまた撮るとそんなに悪く見えない]
貧しい国々の開発の妨げになっている原因にはどの様な物があるのか? 天候(と農業やマラリア等の病気への影響)、権力者や官僚の不正行為、資源の乏しさ、恵まれない土地、等いろいろ挙げられるが、ジェフリー・サックス教授が強調する理由の一つは海に面しているかどうかと言う事。
一人当たりGDPの最も少ない国(またはHuman Development Indexの低い国)を見ると、海に面している国は比較的少ない。海路は陸路より遥かに運送費用が少ない。海へ面していなければもちろん港もなく、鉄道や車道の発達していないサハラ砂漠以南の国々等にとっては貿易の機会が格段と減ってしまう。
マラウィに住んでいて村や市場で食事をしたり、ここで生産されている食べ物を買うのは安い。その反面、製造工業がほとんどないこの国ではあらゆる機械や文房具、電子機器やその他日常品の多くは輸入品ばかりで、アメリカや日本よりも高値だ。
先週、現地の大学の教授とキャッサバのバリューチェーンの話しをしていた際、おろし用の機械がいくらするか聞いてみた。海に面している隣国のタンザニアでは900米ドルするところ、マラウィで購入すると2000米ドル以上するらしい。その他の機械や発電機に関しても同じ。もちろん逆もしかりで、マラウィの輸出品は輸送費用を含むと自ずと高くなってしまう。
写真は20枚程現像するつもりだったが結局7枚に絞った。開発の厳しさをまた改めて知らされたような気がする。
p.s. 今日は町のはずれにあるGymkhana Clubのバーでゆっくりした夕方を過ごしている。この近辺では高級な施設だが、お湯、砂糖と地元の茶葉、牛乳しかいらないミルクティーは何杯も飲んでも勘定はたったの200クワチャ(約120円)だった。
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[Gymkhana Clubでのゆっくりとした夕方]

以上

マラウィのビレッジより 最新の活動レポートが届きました!(第5回)

Mwandama(ムワンダマ)にてインターンを行っている唐須史嗣さんからの身辺雑記をご紹介いたします。

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2010年7月13日(火):「死」
先日スタッフのお母様が亡くなられました。マラウィに来て7週間目、スタッフの家族の不幸は覚えているだけで3回目。マラウィの人達にとって「死」というのは身近な存在です。ここでは葬式をする際、道路の両方面100メートル程の位置に木の枝を数本並べます。車や自転車は木の枝を合図にスピードを落とす、このような風景もしばしば目にします。
2010年7月15日(木):肥料とfertilizer
以前述べたように、Masters in Development Practiceでは、科目の一つとして農業や食料安全保障について勉強します。マラウィは2005年以降、政府の肥料補助(fertilizer subsidy)プログラムによって、主要産物であるトウモロコシの生産量を数倍にも増やすことに成功し、開発業界から注目を浴びています。
その一方で、肥料を使うことに対して批判の声も聞こえます。
一昨日バスに乗りながら考えていて、「肥料」と”fertilizer”ではニュアンスが違いませんか? 英語で”fertilizer”と言うと、大手の農業関連企業の悪どい行動や、環境への影響等をつい思い浮かべてしまうのですが、「肥料」と日本語で読むと大方ポジティブな印象しか受けません。僕だけでしょうか?
2010年7月22日(木):31歳
小さい頃は同じ誕生日の友達にはライバル心のようなものを感じていた。小学校二年の時に同じ誕生日のインド人の同級生のピンク色の下着を馬鹿にして喧嘩になったのも、そういう競争心から出た行動だったのかもしれない。
でも31年も生きていて社会に出ると少し状況も変わる。同じ誕生日の人に会っても驚き喜ぶのはせいぜい1分程。
今住んでいるマラウィの家には僕達研修生4人の他、家の主であるUNDPの31歳のマネージャー、家のまわりの手伝いをしてくれる彼の23歳の甥、それと警備兼庭師の31歳の男がいる。僕を含め、3人が31歳だ。しかも庭師と僕はたった1ヶ月違い。マラウィまで来て一緒に住んでいると、妙に親近感が湧いてくる。とともに、僕達三人の生い立ちや置かれた状況の違いを改めて感じる。
今まで開発関係の本を読んだり、現場で活躍している人達の話しに、こういう仕事を始めたきっかけを聞くと、良くあるのが「生まれた場所が異なるだけでここまで違う人生になる。少し間違っていたら飢えに苦しんでいるのは私だったかも知れない」と言う様な答えである。
常に自分より大変な状況に置かれている人を見、比較しながら毎日を送っていたら、少なくとも僕は幸せに生きることができない。でも自分の置かれた幸せな境遇を忘れずに感謝することは大切だと思う。そういう気持ちを持ちながら行動したら、少しだけましな世界になる。そのような気がする。

以上

東大五月祭「MPJユースの会」シンポジウム第1日目のレポートを掲載しました!

ミレニアム・プロミス・ジャパン「ユースの会」では、去る5月29日(土)30日(日)の2日間連続で、シンポジウムを開催しました。
第1日目に、開発セッション「今注目されるBOPビジネスとは」と題して行われた際のレポートが出来ましたのでご覧ください。

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東京大学五月祭連続講演会 
ミレニアム・プロミス・ジャパン・ユース主催

Your Africa!! ~アフリカは、身近だ!!~
開発セッション「今注目されるBOPビジネスとは」
P1010292.JPG 

 
【日時・場所】2010年5月29日(土) 10:30~12:30
        東京大学 本郷キャンパス法文1号館1階21教室
【プログラム】
Ⅰ.ご挨拶 中野宏一氏(ミレニアム・プロミス・ジャパンユースの会代表)
Ⅱ.講演 「BOPビジネスへの政策的支援と具体的取組」
      小山智氏(経済産業省 貿易経済協力局 通商金融・経済協力課長)
Ⅲ.講演 「UNDP-民間セクター パートナーシップ」
      村田俊一氏(国連開発計画(UNDP)駐日代表)
Ⅳ.講演 「BOPビジネスの課題と可能性 –西アフリカにおける活動事例」
      西嶋良介氏(ヤマハ発動機株式会社 海外市場開拓事業部
      中部アフリカグループリーダー)
Ⅴ.パネルディスカッション
Ⅵ.質疑応答
Ⅶ.ご挨拶 北岡伸一氏(東京大学法学部教授 ミレニアム・プロミス・ジャパン会長)
Ⅰ.ご挨拶 中野宏一氏(ミレニアム・プロミス・ジャパンユースの会代表)
私たちは東京大学法学部の北岡伸一教授が会長を務めておられるミレニアム・プロミス・ジャパンというNPO団体の学生団体である。ミレニアム・プロミス・ジャパンは、2000年に国連で採択された国連のミレニアム開発目標(MDGs)を達成するために、コロンビア大学のジェフリー・サックス教授が設立したNPO法人ミレニアム・プロミスの日本版である。北岡教授はもともと日本政治外交史の教授だが、国連の次席大使として2年間赴任された。ミレニアム・プロミス・ジャパンは2008年に設立されたのだが、私は2009年にアフリカのモザンビークに派遣された。他にもMPJユースのメンバーが今年はケニアのキスムに派遣される等、様々なところに派遣されている。私たちは、人に会うことで自分たちも成長していくことを目指している。今日のような講演会や勉強会を開催しており、これまで大きなものだと、タレントのアドゴニー氏や、南アフリカ駐日大使、そして、外務省アフリカ第二課長をお呼びして勉強会を行った。他にも、週1回の勉強会を行っている。また、アフリカン・ナイト・パーティというものを130人規模で去年の5月に行った。メンバーは現在約40人である。東大生が大半で、東大の院生は公共政策大学院、医学系研究科、学部生は法学部、教養学部、国際関係学科、経済学部等色々である。他には、中央大学、一橋大学、明治大学等の学生で構成されている。我々の特徴として、関心領域が非常に広いということが挙げられる。外交といういわゆるハイポリティックスに興味のある学生から、医療、開発、協力などに興味のある学生がおり、私たちの進路も色々だ。外務省に国家医師として入省した人もいるし、来年から商社で働く人もいる。国際医療を目指して、医科歯科の病院で看護師として働いているメンバーもいる。私たちの活動に興味があれば是非一度ホームページにアクセスしていただいて、メールをいただければと思う。
本日の講演ではBOPビジネスについてお話しいただく。BOPビジネスというのは、世界の人口の72%を占める年間所得3000ドル以下の低所得層向けのビジネスである。市場規模はだいたい日本の実質国内総生産と等しいと言われており、現在日本および世界でとても注目されるところとなっている。経済産業省が主導して、BOPビジネス政策研究会というものを今年の1月まで開いており、その責任者だったのが今日お越しいただく小山氏である。他にもヤマハ発動機さんは実際にBOPビジネスの成功例であるし、UNDPは開発の現場で携わっていて、実際にUNDPもBOPビジネスのようなことをされているということである。
Ⅱ.講演
「BOPビジネスへの政策的支援と具体的取組」
 小山智氏(経済産業省 貿易経済協力局 通商金融・経済協力課長)

私は昭和61年に経済産業省に入って以来、25年ほど通商政策やそれ以外にも色々な仕事をさせていただいたが、現在の仕事においては、大きく二つの仕事をしている。一つは、経済協力ということで、BOPをはじめとしていかに日本の優れた技術・サービス、経済を、世界の発展に向けていくかということである。もう一つは日本の産業政策という面から日本の企業を元気にさせて、それが私たちの生活の幸せにつながるようにするということである。
今日は、BOPビジネスについて最近の経済産業省をはじめとした政府全体の動き、そしてそれに対する今後の取り組みを説明させていただく。
1.BOPビジネスとは
BOPビジネスとは何かということについては、色々な定義の仕方がある。ここでは、主に以下のような言い方で進めさせていただきたい。
主として、途上国の低所得階層(年収3000ドル以下(PPPベース))を対象とし、持続可能性のある、しかも社会課題の解決につながることが期待されるビジネスである。ただ、具体的な定義は、行政の支援政策ごとに違うし、また大学、研究室の中で議論されていることと思う。
(1)BOP層
世界の所得ピラミッドで見てみると、一番上の1.75億人が富裕層で、その次に、年間所得3000ドルから20000ドル程度のいわゆるボリュームゾーンといわれるものがある。その下の年収3000ドル以下の方をBOP(Base of the Economic Pyramid)、いわゆる基礎的な部分の人々という風に考えている。この層は、人口が約40億人と非常に多く、世界の人口の7割を占める。また、経済規模も小さいと思われがちだが、実際には約5兆ドル、つまり日本の実質国内総生産に相当し、世界全体の約1割を占めている。しかも、将来的にはここの人口が伸びるだろうし、5兆ドルが更に大きくなるということが考えられる。
(2)検討の背景
なぜ経済産業省として検討を始めたかということについては、大きく二つ挙げられる。一つは、産業政策としての考え方である。ご存知のように先進国は、人口はこれから大きく増えないし、市場自体も規模の大きな拡大が見込みにくいという中で、途上国のボリュームゾーン、及び、その次の「ネクスト・ボリュームゾーン」という意味でのBOP層については大きな注目が集まっている。リスクはあるもののそこにいかに入っていくかというのが、今後の日本の経済、企業の大きな課題である。特に日本の企業は、今までいわゆるハイエンドなサービス、商品を中心に事業を進めてきたが、それだけで本当によいのかという問題にもつながる。
また、世界には水や衛生、貧困に苦しんでいる多くの人々がいる。それに対して、経済協力政策をいかに課題の解決につなげられるか、しかもそれが、無償であげるだけではなくて、ビジネスを使ってそういうものに対応できないかというのが、経済産業省としての関心点である。
(3)BOPビジネスの事例
世界中の多国籍企業をはじめとした多くの企業、援助機関、NGO等が、ビジネスと現地の課題解決の両立に努力している。
ライフストローは、ベスタゴー・フランセンという会社が、オランダのデルフト工科大学と共同して作った、浄水装置である。1本わずか3ドル~4ドルで、3年間使える。これにより、水中のバクテリアや細菌が減少し、安全な水を飲める。国際機関の支援によりアフリカ・アジア等に供給されている。
ユニリーバは、洗剤やシャンプー等を小袋化して、一袋当たり1円~3円と言う非常に安い値段で売っている。しかも、現地の女性たちをトレーニングし、流通・販売に関わらせることで新たな雇用を生み出している。これは、基本的には民間によるもので、それを国際機関や政府機関が支援しているケースである。
日本の企業では、住友化学が作っているオリセットネットという有名な事例がある。オリセットネットは、殺虫効果が5年以上持続するため、サブサハラ地域で大きな問題となっているマラリアの予防に効果がある。これも基本的には国際機関等の支援により供給されている。
日本ポリグルは、小田会長という非常に元気な会長がいる、大阪の従業員35人前後の小さな会社である。納豆から水質浄化剤を作り、色々な有害物質を沈殿させることにより、きれいな水が飲めるようにした。小田会長と一緒に今年バングラデシュに行き、グラミン銀行のユヌス総裁と話をしたが、強い関心をもっていた。これも地元の女性を訓練して販売員として採用している。1グラムあたりだいたい10リットル浄化でき、コストはだいたい1円~2円ということで、現地でも十分可能な価格に設定している。
昨年、住友化学には、援助に頼らないでどのようにビジネスができるのか、日本ポリグルには、いかにバングラデシュをはじめとした途上国に広げられるかというようなモデル調査をしていただいた。このように日本企業が頑張っている例が随分ある。
2.欧米におけるBOPビジネス支援
■ USAID(米国国際開発庁)による支援実績
USAIDはアメリカの援助機関だが、そこでも多数のプロジェクトを支援している。プロジェクトは、太陽光発電や蚊帳、森林保護といったような環境や生活に関係するところもあるが、経済、知力の向上、ITにも力を入れている。マイクロソフトやインテル、シスコシステムズ、ヒューレット・パッカードといったところがIT技術を入れて、しかも教育・技術指導まで行っている。こういうところにニーズが強いというのもあるし、私たちから見ると将来の規格、スタンダードにつながっていく分野であると考えられる。
3.BOPビジネス検討の意義
まず第一の側面として経済産業省としては、日本企業の海外展開の面でお手伝いをしたいと考えている。特に、中小企業の中には非常に面白い技術を持っているところがあり応援したい。インドやアフリカに行くと、中国製品や韓国製品が沢山出ているのにお気づきになると思う。日本製品も一応出ているが、まだまだその浸透が足りない。国内支援機関や国際機関の支援も活用して、お手伝いをしていきたいと思っている。最近流行りの言葉で官民連携というものがある。1970年代~80年代、日本が世界で貿易黒字を出していたときには、非難されてなかなかできなかったが、その間に特に欧米の国々が中心となって官民連携で進めていくような状況ができた中、日本は日本として対応をすべき時期に来ている。
2番目として、途上国における大きな課題をいかにして解決していくかということが挙げられる。BOPペナルティという言葉があるように、今までは、お金がない人は、品質が悪くて高いものを苦労して手に入れていた。ビジネスの力を通じてそれを解決できないか、特に日本の商品、サービス・技術というものを上手く使えないかということがある。
3番目は、単に援助として相手に物を渡して終わりではなくて、援助を通じて途上国の人々の自立に貢献する、つまり、途上国の所得の向上をいかにお手伝いできるかという点である。BOPというのは日本では言葉としては完全には定着していないが、人口的にみるとアジアでは8割、アフリカでは95%がこの層といわれる。こういう方々の所得を上げることによって、地域全体の所得が上がる。「衣食足りて礼節を知る」という言葉があるが、BOPビジネスに関わることによって、経済的に豊かになっていくということが、地域の経済の安定、更には政治全体の安定につながるということを期待している。
以上のことは、私たちにとっても今まであまりおつきあいのない分野である。企業としても、今までに馴染みの深い先進国だけではなくアジアやアフリカの広い地域、人々、NGO等とのネットワークにも関係しているので、ビジネスにとってのフロンティアと言える。NGO、NPOの方々も、今までは援助、つまり資金をもらうことによって進めていたものを、ビジネスの力を上手く利用して、それぞれ皆さんがやりたいことを達成するというような、仕事の進め方のフロンティアである。これを進めるには乗り越えようとする気持ちと、そのための努力、イノベーションが必要になってくる。これができれば、企業だけではなくて、政府、更にはNGOの方々、そして当然BOP層の方たち、皆にとってプラス、つまりウィン・ウィン・ウィンのやり方ができるのではないか。政府としてもそのことを積極的に支援していくということだ。
4.BOPビジネス普及拡大に向けた取組
(1)平成21年度の取組
昨年から今年にかけて経済産業省では、BOPビジネスの概念の普及と意識の醸成のために、各種のフォーラムやセミナーを行ってきた。地方にも非常に面白い技術を持っている企業がある。たとえば、自転車で電気を起こしてそれを携帯電話や家電の電源として使う等、先進国ではもう使わないけれども、途上国では十分なニーズのある技術がある。そういう企業のあるところでも随分PRしてきた。
また、政府も企業も、BOP層のニーズがどこにあるかわかっていない面がある。よって、潜在ニーズ調査としで、JETROを通じて、色々な国の調査をしている。更に、国内の企業から直接お話を聞き、海外の先進事例についても調べた。報告書がホームページに出ているので是非ご覧いただきたい。成功・失敗と言うのはビジネスの目から見ると続いたかどうかということで判断しているが、それが開発につながったかどうかとは違う観点もあるが、成功した例、失敗した例について、更には、失敗した理由についても色々調べてきた。また、海外、国内ごとの支援制度を色々勉強した。
さらに、実際にビジネスをやりたいという方の参考にするための、企業提案を公募により採択し、具体的なビジネスモデル形成支援を行った。今日お話をいただくヤマハの方も提案され、それを今進めていただいている。この中には日本を代表するような大企業も入っているし、さきほどのポリグルのような中小企業も入っている。その中でモデル事業として上手くいった例、必要な点は何だったのかということを示してもらい、それを皆さんに知っていただこうということで調査をした。このような調査をまとめて研究会を開き、報告書を取りまとめたということだ。
(2)今後の具体的対応策
世界の事例と共に色々な企業の成功した例、失敗した例をみると、BOPビジネスを進めて行く上で必要なことは大きく6つある。まず、必要な情報がないというのが大きな点として挙げられた。2点目に、誰と組めば良いのか、パートナーになってもらうかという点である。企業や政府、さらにNGOやNPOとどういうおつきあいをすればよいのか、という情報が必要である。3点目として、普及啓発活動の重要性が指摘されている。4点目として、特に中小企業の場合には、資金・金融面で色々な問題を抱えていることがあるので、そうした課題解決の支援である。5点目として、技術開発やビジネスインフラの整備も重要である。そして、6点目として上記支援をまとめて連携を図れるような場所はないだろうかということで、「BOPビジネス推進プラットフォーム」を作ってもらえないかという話をいただいている。
(3)検討中の事業内容(案)
今年は、議論することから実行する年にしていきたい。そのために、オールジャパンによる推進母体を今年の夏から秋に設立したいと考えている。最初のうちは小さな事業であるが、将来本格的な事業として、関係省庁、支援機関、民間企業、NGO、社会起業家の方も参加いただき、私たちが集めた情報等を使っていただきたいと思っている。更に今年度から3年ほどかけて、具体的ビジネスの形成支援ということで、JICA、ジェトロ等とも共同しながら、実証FS事業の実施、人材育成や、何が必要かということを含めて勉強していきたいと思っている。研究開発、公的資金の活用についても、使える制度は沢山あるので、そうしたものを是非利用していただきたいし、我々もその改善に努めていきたい。そして、これらの前提として色々な調査事業を併せて続けていきたい。また、研究アカデミックな面での対応が日本の場合はまだ層が薄いので、経済、経営、技術開発、デザイン等の多方面で研究を進めていただけたらと考える。
(4)BOPビジネス推進プラットフォーム(仮称)のイメージ
途上国では今も多くの人々が色々な社会的課題に直面しているが、ビジネスだけではそれらを解決することができない。一方で、援助だけでも解決できない。この二つがうまく持続的に補完することによって解決できる。安くて、優れて、使いやすくて、壊れにくい、というような製品やサービスを提供することで、問題の解決になるし、生活の向上にも当然つながっていく。更に生産・流通・販売に参加できれば先ほど申し上げたバランスのとれた経済成長、生活、政治的安定といったものにつながり得る。日本の技術というのは、今、実は世界中でかなり頼りにされている。製品・サービスだけでなく、物の考え方も含めて、是非皆さんにそういうことに力を入れていただきたいと思っているし、私たちもビジネスの場合には、会社のトップの人に気持ちを持っていただくのが重要だと思っているので、経団連や商社の集まり等においても一生懸命説明している。まもなく纏められる経済産業省の「産業構造ビジョン」という、今後10年間、日本の産業は何をするべきかという指針の中にも、BOPビジネスの支援というのを入れて支援していきたい。
Ⅲ.講演
「UNDP-民間セクター パートナーシップ」
 村田俊一氏(国連開発計画(UNDP)駐日代表)

デンマークでCOP15が開催され、そこで何が起こったかというと、グローバルな世界の政策の中に、途上国の意見を反映せざるをえなくなってきた。産業国と途上国との関係というのは、以前よりも随分変化しつつある。企業は、途上国の意見、途上国の消費者を、戦略的にその企業の展開に入れなければ、なかなか企業の業績が上がらないという、大きな流れの中に入っている。昔はチャリティでやっていたことが、CSR・社会貢献という形で企業のマーケティング・ストラテジーの一環となり、今はそのCSRといわれるマーケティング・ストラテジーを継続・維持するためには、企業はやはり儲からなければならない。非常にソフィスティケートされた企業の戦略が求められているということだ。
結論から申し上げると、日本のこれからの企業戦略をODAとどのように結び付けていくか、なおかつ、国連の社会は今どのように動いているか、そしてUNDPが今、グッドプラクティスとして扱っているヤマハや三井物産等のケースをどのように私たちは見ていくべきなのか。以上のことを一緒にしながら、グローバルな流れでミレニアム開発目標を達成することが、非常に重要な課題になっている。そしてミレニアム開発目標のゴール8であるパートナーシップ、これがBOPビジネスとの関連が出てくるわけだ。UNDPにおいても、そのパートナーシップと、ゴール1からゴール7までの推進を補完する企業を全面的にサポートするという国連の政策が出ている。その企業団体は、「Business Call to Action」という、当時のイギリスのブラウン首相が提唱して集まった団体なのだが、その民間団体の中に、日本企業はまだ住友化学と三井物産しか入っていない。これは何を意味するかというと、グローバルな流れに日本の企業は非常に遅れてきているということだ。
よって私は、「日本モデル」というものを提案している。これには、4つの集合の輪がある。政府/公的機関の輪、市民社会の輪、企業の輪、そして、国連機関・国際機関の輪である。今までは企業単体で、途上国のビジネス展開をしていた。一方、政府の輪というのは、ODAを中心にその展開を行ってきた。市民社会の輪については、1990年代にアメリカの企業がチリの銅山で国際的に訴えられたケースがある。その時から企業は、自分たちが事業展開する途上国における消費者、そういったところでのケアというのをしっかりやっておかないと、自分たちの企業イメージや、外交的な問題を醸し出す要因になってしまうというリスクを考えるようになった。そのトレンドをヨーロッパではいち早く感じ取って、CSR、社会貢献という一つの展開をマーケティング・ストラテジーとして打ち出してきたわけだ。それに乗り遅れたのが日本の企業である。乗り遅れた理由は多々あるとしても、今からでも遅くない。そして、その4つの集合の輪を、途上国でどのように展開するかというのが、これからの日本企業に一番重要であり、それが私の提唱している「日本モデル」である。
UNDPはヤマハと一緒に、インドネシアにおいてクリーン・ウォーターのプロジェクトを行った。UNDPはそのフィージビリティを行った。クリーン・ウォーターの機材を小学校に一台持っていき、土台の土木工事はロータリークラブが行った。そして、水をどのように分配するか、どのように汲み上げるのかということを決める、水コミッティをセットした。そのコミッティを作ったのは、UNDPとそのコミュニティの人たちである。以上のように、単体で全てができるような状態ではなく、これからのビジネスとこれからのODAのトレンドと、市民社会の意見を汲み上げた形で、四つ巴でやれるという実績を、ヤマハは持っているわけだ。
それを今、アフリカでどのように展開しようかということについて、モザンビークの例を挙げる。三井物産は、モザンビークにおいて、村おこしのインプットとして、ソーラーエネルギーを使った事業(学校に対するライティングシステムや水を汲み上げるシステム等)をUNDPと一緒にやろうとしている。その中で、ヤマハも船外機としてはモザンビークでは無敵なので、将来の可能性としてヤマハにも何らかの形で参画していただいたり、JICAの農業の専門家が参加することなどが検討される。日本のODAと、UNDPと、コミュニティ・ディベロプメントが参画し、そして企業がCSRをスタートするが、そこにはコアビジネスにつなげる戦略が入る。これが、今私が一生懸命推進している日本型モデルなのだ。おそらくこれは、ミレニアム・ビレッジや途上国のリーダーシップが非常にしっかりしたところでは、展開できるのではないかと考えている。
日本政府は1996年のDACの会議で新しい開発のODAの方向性として、ミレニアム開発目標の原型を示している。日本も世界に公約して一緒にやろうと言った以上は、企業、ODA、市民社会、国連機関と一緒にやろうという方向性で動くということが外交政策としても必要である。
市民社会というのは、大事なビジネスモデルの一部になると私は思っている。日本でも、あまり利益ばかりを追求すると、公害問題と同じで訴えられる。それを今、中国やインド、ブラジル等の新興国でも同じことをやらないように、UNDPも一緒に警鐘を鳴らしているわけだ。
こうした展開を、日本の企業と一緒にアフリカやアジアでやれるかということが大事なのだ。私は日本の企業の方々に、UNDPや国連のフラッグを大いに使ってくださいと言っている。ただし、それには一つ条件がある。ミレニアム開発目標という8つのゴール達成に向けて一緒にやるということを公約してもらうのだ。それがBusiness Call to Actionというグループであり、日本はそこに2つの企業しか入っていないということである。
■ ミレニアム開発目標
ミレニアム開発目標の中間報告から、途上国の貧困撲滅のためにはスモールビジネスが重要であり、中小企業を育てるということが非常に大事であるということがわかってきた。また、ジェンダーの問題も非常に大事である。そして、エネルギーも非常に大切である。クリーン・エネルギー、ユーザーフレンドリー・エネルギー、応用の効くエネルギーである。
そして、企業としては、あまり大きなところから始めないことが重要だ。途上国はやはりキャパシティの問題で、吸収能力に問題があることが多い。よって、小さくパイロットで始めて、少しずつ大きくしていくという戦略が必要である。
■ 開発からみた「BOP市場」
ここでは、国連から見たビジネスについて、一つだけ警鐘を言わせてほしい。この世界で、2ドル以下で毎日暮らしている最貧層の人たちは、BOPビジネスの対象になり得るかということだ。しかし、その最貧層が増えていくと、社会不安や政治不安につながる。だから、ミレニアム開発目標のゴール8であるパートナーシップを組んで、その最貧層のポピュレーションを少しずつ減らしていくための貢献を、ビジネスとしてできないものか。私は、始めからマーケットとしてビジネスになるところはBOPと言いたくない。その辺を宿題として皆さんに考えていただきたいところだ。
■ 包括的な市場の育成
スタートはチャリティでもよいし、CSRでもよい。ただし、それを持続可能にするためには、やはりマーケティングとしてプロフィットを出さないとだめだ。そこが一番大切なところである。
■ UNDPの民間セクターのイニシアティブ
同様の取組として国連のグローバル・コンパクトというものがある。やはり私は、パートナーシップとしてODAが全てではなく、ビジネスが全てでもなく、国連も使って、市民社会も一緒に使って、という市場の展開というものを見ていただきたい。
■ イニシアティブ① 貧困層を対象としたビジネス戦略報告書
大きなことをビジネスとして進めるには、UNDPはそれほど適していないかもしれない。ただし、世界130以上のネットワークを持っているので、情報はどの大使館よりもどの企業よりも多い。
企業だけでリスクを計算したり、パラメータを見てリスクを分析したりすることは、非常に厳しい。それに対して、UNDPとしては、こういう情報があるとか、こういうフィージビリティ・スタディを今までやってきたがこれを使ってみないかという接点を持って、一緒に取り組むことができる。
■ イニシアティブ② ビジネス行動要請イニシアティブ
Business Call to Actionには、コカ・コーラやエリクソン、マイクロソフト、最近ではノキア等が参加している。携帯電話は今アフリカで非常に流行っており、それにより貧困地域において情報の伝達手段が非常に広がっていった。電話一本で、どの部族がだいたいどういう状況にあるかというのが段々理解できるようになってきた。そのネットワークを提供しようとして、自分たちのマーケティング・ストラテジーに入れていったのがエリクソンやノキアである。
■ イニシアティブ③ 持続可能なビジネス育成イニシアティブ
持続可能なビジネス育成のイニシアティブということになると、やはり国連のネットワークを大いに使っていただきたい。現地の調査、データベースも私たちが提供しよう。ビジネスのサポートや能力開発等は、やはり現地政府、企業、市民社会である。これは、日本のビジネス、日本の政府、日本の消費者団体、日本の国連機関ではなく、その方向を逆転して、モザンビークの政府、モザンビークに駐在する大使館、モザンビークに駐在するJICA、モザンビークに駐在する日本の企業、そしてモザンビークに存在する市民の方々である。ODAというのは、リスク・ミニマイザーとして、シード・マネーとして、企業を誘導できるのではないかと私は思っている。国連機関としては、ミレニアム開発目標の達成に向けて一緒にやっていくのだったら、それを応援することができる。
■ 「日本モデル」の可能性
私が提唱している「日本モデル」は、この四つ巴をどのようにブレンドしていくか、そして、このブレンドした4つの集合を、どのように展開していくかということである。このモデルをどう展開していくべきなのか、どこで展開するべきなのか、いかに展開していくべきなのか、それを考えることが私たちのこれからの課題ではないかと思っている。
Ⅳ.講演
「BOPビジネスの課題と可能性 -西アフリカにおける活動事例」
 西嶋良介氏(ヤマハ発動機株式会社 海外市場開拓事業部 中部アフリカグループリーダー)

私が属している海外市場開拓事業部は、途上国約140カ国を担当している事業部である。ヤマハの商品は、オートバイや船外機、発電機、スノーモービル等があるが、今回はアフリカで売っている商品を選んでご説明したい。
■ アフリカでの主な事業内容
船外機による漁業や、オートバイを使ったトランスポーテーション、タクシービジネス、ポンプによる農業支援をアフリカで展開している。
■ 将来のBOPのポテンシャルとは?
2010年の人口は約60億人であるが、50年前の人口はわずか30億人であった。つまり、50年で人口が倍増したことになる。これは国連統計からとったデータだが、次の50年で人口は更に30億人増えるという予想がされている。たとえば、1960年の人口を地球一つ分の規模とすると、わずか100年の間に、地球が三つ生まれることになる。しかし、欧米を中心とする先進国は100年間でほとんど人口変化がない。一方、アジアは非常に大きなボリュームゾーンとなる。アフリカは、50年前は人口2.5億人だったのが現在約10億人であり、2050年には20億人になるといわれている。人口増加率でいうと、アフリカがアジアを抜き100年間で7.75倍となる。こうやって人口変化を見ていくと、現在でも40億人のボリュームゾーンであるBOPが、今後更にどんどん膨れていくことになる。
企業的に、このマーケットをどう見るかと考えると、2050年に70億人がBOPに属すると仮定し企業がBOPでビジネスを展開できなければ、企業自体の存在も危ういのではないかと思う。たとえば2050年、今から40年先だが、その時に生長した企業や生き残っている企業がBOPで成功した企業なのか、是非皆さんの目で確かめていただければと思う。
■ 西アフリカ:農業用ポンプの販売事例
今回ご紹介するのは、ウォーターポンプの販売という活動事例である。ウォーターポンプとは、水を汲み上げて配水するという極めてシンプルな商品だ。これは世界中の多くの農業地帯で使われているのだが、構造がシンプルであるためにメーカーが乱立しており、100社以上がこういったポンプを作っているのではないかといわれている。こういった激戦市場で販売されている商品でありながら、車や家電のようにデザインや機能性で商品の差別化が非常に難しい商品なのです。果たしてヤマハのポンプがアフリカで売れるのかというところに対して事例を紹介したい。
■ ナイジェリアでのウォーターポンプの使用例
ナイジェリア北部の農業地帯のある農家では、中国製のウォーターポンプを使っており、なかなかエンジンがかからなくて、水を出すまでに30分時間がかかった。農地もかなり荒れており、水が出ると、いきなり畑にまき散らすというのが、ナイジェリアの典型的なウォーターポンプの使用例である。
■ ナイジェリアの典型的な発電機・ウォーターポンプの販売店
ウォーターポンプに関しては、ナイジェリアがアフリカ最大市場と言われている。 ナイジェリアの人口は1億4千万人で、主要産業は石油と農業なのだが、人口的にはかなりのパーセンテージで農業従事者がおり、ウォーターポンプが非常に売れている。ポンプを売っているお店は、地域ごとにお店が秋葉原のように十数件並んでいる状態で、残念ながらこうしたお店で、ヤマハの商品を含めた日本製のポンプを見ることはほとんどない。ほとんどが中国製のポンプで、ヤマハやホンダやスズキと表示してあっても、よく見るとどこか違い、殆どが類似品である。しかし、ヤマハもポンプをこの最大市場で売っていかないとビジネスにならないため、苦労して販売店を見つけ、専用の棚を設けて売っている。しかし、なかなか売れない。なぜ売れないのかと販売店の店主に聞くと、安い商品から次々売れていき、特に日本製のブランドの類似品からどんどん売れていくのだという。本当は農民も正規品の高品質のポンプがほしいのだが、残念ながらナイジェリアの農民は収入が低いので、日本製の高いポンプには手が出ないのだという。ヤマハが本当にナイジェリアでポンプを売りたいのなら、中国製のように値段を下げるしか方法がないというのが、だいたいどこに行っても聞く店主の話である。実はこういった話というのは、だいたい日本企業がアフリカに進出して最初に直面する、一番大きな問題だと思っている。残念ながらヤマハも同様の問題に今直面していますが、ここで終わるとBOPの失敗事例として話が終わりますが、ヤマハここであきらめずに、次の手を打っている。
■ セネガルの事例
セネガルは、人口1270万人で、面積は日本の約半分、主要産業は農業と漁業という国である。
我々が訪れたのはセネガル北部のLouga地区のGabarという農村である。Gabarはモーリタニアの国境近くの農村で、サハラ砂漠にかなり迫っている地域で、非常に気温が高くて乾燥地帯の農村である。ここで採れる農作物は、たまねぎ、おくら、唐辛子、キャベツ等である。
■ セネガルの社会問題
今年の5月のみどりの日に、セネガルのサール駐日大使がセネガルの問題を講演している。その中で、砂漠化によって、アフリカの人たちは非常に困っているという話があった。サハラ砂漠が拡大傾向にあり、セネガル以外にもマリ、ブルキナファソ等の農民たちが苦しめられている。まさにサハラ砂漠が拡大し砂漠化という問題に直面している窮地の農民たちの農村を、我々は訪れたわけだ。
■ この地方の典型的な水遣り方法
我々が訪れた農村での水遣りは、ポンプを使わずに人の手によって行われていた。ある農家では、毎日、3人の農民がバケツ2杯に水を入れて、井戸と畑を朝から晩まで往復していた。
■ ポンプを使った新しい水遣り方法”Dripping Irrigation”
ここでヤマハ発動機が提案したのは、新しい農業の方法だ。ポンプで水を汲み上げ、吸い上げた水をチューブでまんべんなく畑に給水する。これは、”Dripping Irrigation”システムと呼ばれる方法で、ピンポイントで種に水をあげていくという方法だ。乾燥地帯で限られた水しか使えない所では、非常に有効な手段ではないかと考えている。この導入によって、水まきの労力が3人から0人になった。つまり、3人が朝から晩まで水遣りをやっていたが、この労力が0になったことによって、彼らは雑草をとったり、新しい作付を始めたり、新しい農地開発に入ったりすることができる。それにより、作付面積がどんどん広がっていくという効果を出すことができた。
では、どれだけの水を土地に与えているかというと、チューブから出る水は、まさに一滴である。一滴の水で本当に作物が育つのか皆さん疑問を持たれると思うが、以下をご覧いただきたい。
■ (新方式)”Dripping Irrigation”により生産効率が大幅に向上
今までは水を手で遣っていたので、コストとしては、3人の農民の日給がかかっていた。しかし、ポンプを入れることによって、初期投資としてチューブ代とポンプ代を一旦払えば、その後の労力はゼロなのでコストはわずかな燃料代のみとなる。一方、農民を3人使うのは定期的にコストがかかっていく。これを長期的視点で見ると、イニシアルコストはかかるのだが、確実にポンプとチューブでやったほうが、コストが少なくて済む。
更にこのシステムの導入によって、作物が安定的に採れるようになった。また、作物の出来も非常によくなり、大きなたまねぎが採れるようになった。作付面積も広がり、アフリカでよくある事例だが、子どもたちもそれまでお父さんたちを手伝って水遣りをやっていたのだが、その作業がゼロになったので、子どもたちが学校に行けるようになったという報告も受けている。
Dripping Irrigationと、手で水を遣った場合の作物の出来具合を比べると、Dripping Irrigationの方が作物の成長が早い。手で水を遣ると、どうしても成長にムラができて、なかなか作物が安定的に採れないという結果が出た。
■ ヤマハのポンプで村の農業が活性化
ヤマハのポンプを購入して農法を変えたことによって、農業を活性化することができた。更に、BOPビジネスにたとえると、ナイジェリアのように商品を店頭に並べて中国製と価格競争をしなくても、こうやって自らビジネスプランを提案して、価格競争に頼らないビジネスモデルを作るということが可能だということが証明された。今回は農村を活性化させたということで、企業の社会的貢献、CSRという見方もあるが、それ以上に、ビジネスとしてポンプを販売できる需要を作り出すことができた。社会問題を解決するという側面も含めて、ヤマハの新しいビジネスモデルの成功事例ではないかと考えている。
ここで、ポンプを売るだけならポンプさえ持っていけばよいのに、なぜDripping Irrigationシステムにしたのかという疑問が出ると思う。これには大きな理由がある。たとえばポンプだけをこの村に持ってきて普及した場合に、確実に中国製の安いポンプがやって来る。民間企業としてこれだけの労力とお金を費やして育てた市場が、後から来た低価格のポンプメーカーにとられてしまうのである。それを防ぐ方法として考えたのがDripping Irrigationシステムだ。このシステムにより、農家の収入が上がる。農家の収入が上がると言うことは、わざわざ安いポンプに手を出さなくても、ヤマハの高品質ポンプを買い続けることができるのである。これをBOPペナルティの解消という風に呼んでいる。つまり我々が農民に伝えたかったのは、日本製のポンプから中国製のポンプに切り替えて、わずかなお金をセーブして、後でポンプが壊れて農作物に被害がでるよりも、高品質のポンプを使って、安定的に農作物を育てた方が最終的にはあなたたちにメリットがあるという事を理解してもらう為である。つまり、中国製の低価格ポンプに手を出さなくてもよいように、農民の収入を上げるには、ドリップシステムが非常に有効な手段であったという背景がある。
■ 活動を支援してくれたパートナー
ここまでのことを行うためには、ヤマハを含めた三つのパートナーが登場する。一つは、ベルギーのMECZOPという農業支援団体のNGOである。初期投資を払えない農民に対してローンを組み、できた農作物でお金をリターンしてもらう。また、その農業支援もする。もう一つは、ネタフィムジャパンで、これが今回Dripping Irrigationの技術アドバイスをしてくれたところだ。
この三つのパートナーがあってはじめて実現できたビジネスモデルである。メーカー単独ではなかなか事業領域の幅が広がらないが、このように色々な組織、団体、日本の企業と組むことによって、幅広いビジネスモデルができるのではないかと考えている。
■ ヤマハ、NGO、州政府主催による住民説明会の実施
この成功をもっと広げたいということで、セネガルの州政府と、NGO、ヤマハで住民集会を開いて説明会を行った。沢山の農家の方が来てくださり、荷馬車にポンプを積んで各農村に帰っていった。半年後、もう一回この村に行ってみると、馬車いっぱいにたまねぎを積んで道を走っている姿を見かけた。半年前にポンプを積んで帰った馬車が、今はたまねぎをいっぱい積んで走っている姿を見るのはとても嬉しいことだった。実際にマーケットに行くと、広場いっぱいにたまねぎが出荷されており、農民に聞くと、今年の出来は非常によく、豊作だったと感謝された。
Dripping Irrigationシステムはこの後も他の農家にも普及しており、最初はたまねぎで実験したのが、今は農家の方で勝手にキャベツを作ったりして、自分たちで考えながら新しいシステムの活用をやっている。この村ではDripping Irrigationシステムがなくてはならないシステムになったということで、我々のポンプもよく売れるというビジネスモデルになることができた。
私は、アフリカには高いビジネスの可能性があると思っている。今回聴講していた学生の皆さんを含めて、是非アフリカに興味をもっていただき、いつか我々と一緒に活動できる日を楽しみにしている。
Ⅴ.パネルディスカッション
【パネリスト】
 小山智氏(経済産業省 貿易経済協力局 通商金融・経済協力課長)
 村田俊一氏(国連開発計画(UNDP)駐日代表)
 西嶋良介氏(ヤマハ発動機株式会社 海外市場開拓事業部 中部アフリカグループリーダー)
【司会】
 中野宏一氏(ミレニアム・プロミス・ジャパンユースの会代表)

中野氏:はじめに、今日の講演を聞いて、各講演者の方々がお互いに補足なり質問されたいことがあればお願いしたい。
小山氏:まず村田氏の話を興味深くうかがった。通商交渉をしていると、途上国の力が強くなってきたというのは本当に感じるところがある。お話の中で感心し、同意したことは3点挙げられる。1点目は日本型の四つ巴モデルということで、政府、国際機関、市民社会、企業が一緒になってやるべきだという点である。2点目に、まず小さいところから始めるということについては、高い視点から見ながら小さいところから現場のことを勉強しながら始めるということが本当に必要だと思う。私たちが色々なビジネスリーダーに会ってお話をするときも、BOPビジネスというのは最初から何十億、何百億と言う研究開発費を出す必要はないが、将来のために特にやる気のある人のために少しでもいいから投資をしてほしいと言っている。そして、ほとんどの企業は、社会的な貢献というのが何らかの形で社是に入っているのだから、そのためにもやってみたらどうだろうかと言うことがある。3点目は、中小企業が重要だということである。住友化学のような大きな会社が頑張っている例もあるが、中小企業は現場から動くというのが日本でも海外でも同じだと思う。
一つ質問があるのは、UNDPのプログラムの中に日本の企業が2社しか入っていないというご指摘があった。これはとても残念なことだと思う。2社にとどまっているということをどのように分析され、またそれに対してどのような対応をされているのかということをうかがいたい。
西嶋氏の話をうかがい、なかなか利益が上がらなくても中期的に儲けるようなビジネスプランを作っていらっしゃることがすばらしいと思う。特にNGOや州政府を巻き込みながらやっていくことは、重要なポイントだと思う。このことは私たちのFS調査として今結果を出しているところだ。結果は真似ができなくても、プロセスはある程度は他の会社にとってもレッスンになる。日本の企業の場合は、あの会社が成功するのだったら自分も成功するのではないかという会社が少なからずある。日本の場合、中小企業だけで150万社あるので、その1%の人がそう思ってくれれば、大きな流れになるのではないかということで、私自身も元気づけられる内容だった。
なお、西嶋氏への質問として、セネガルで成功されたということだが、これを今後どのように展開されていくのか、他の国にも広げていく予定はあるのか、それでプロフィットが出てくるのかどうかという辺りを教えていただきたい。
村田氏:Business Call to Actionは、UNDP、英国国際開発庁(DFIT)、オーストラリア政府、国連グローバル・コンパクト、インターナショナル・ビジネスリーダーズ・フォーラム、クリントン・グローバル・イニシアティブの6者によって運営されている。ではなぜ日本の企業は2社しか入っていないのか。まず一つは、情報に関して、日本企業も日本政府もそういうものが存在するということに興味を持たせる環境がなかったのではないかと思う。それは国際機関である私たちの責任もあると思うし、もう一つは、日本企業のグローバルな途上国の展開とミレニアム開発目標をリンクするといった国内でのディスカッションがあまりなかったためであると思う。そんな所へ入って何の利益があるのかとか、そんな所へ入ると変なプレッシャーが出てきて余計なことをしなければならないのではないか、という詮索もあったという風に聞いている。しかし、入らないためにグローバルな流れが分からない方が、おそらくコストが高くなるのではないかと私は言っている。この中に入っていくことによって、他の企業が何をやっているかという情報がとれ、そこで交渉もできると思う。まずは入ってみて、そこから決めていただいてもよいのではないか。日本のビジネスリーダーは、非常にコンサバティブだが、今後、リーダーシップのクオリティの問題が問われるのではないだろうか。
西嶋氏:小山氏の今のBOPのプランについて、我々もアフリカでかなり活動しているが、まだまだ参加が少ないと思っている。残念ながら今アフリカはインドや中国などがものすごい勢いでBOPの市場開拓をしている。これにはなかなか一社では太刀打ちできないので、こういったところも含めて官民連携を強化していただければと思うし、我々も積極的に協力していきたいと思っている。
今後はこの成功事例を横展開するのかという質問があったが、我々は是非横展開したいと思っている。しかし、セネガルのケースは上手くパートナーが見つかったが、どこの国でもこのように上手くパートナーが見つかるわけではない。よって、ヤマハのルート以外にもこういったUNDP、経済産業省のルートを使って色々なパートナーを見つけていくことができれば、今回のプロジェクト以外にも色々なビジネスを展開していきたいと考えている。
中野氏:皆様からのコメントに対して、それぞれ補足するコメントがあればいただきたい。
小山氏:一点気が付いたのは、小さく始めるというのはよいのだが、重要なのはいかにそれを続けていくかということだと思う。ある意味でのしつこさが必要である。特に、日本のリーダーがコンサバティブだというのを非常に心配しているところである。西嶋氏から、ナイジェリアで失敗した事例のお話があったが、普通はそれでやめるということになりかねないが、どうやって上を説得して進められたのか。
西嶋氏:我々の事業部の特徴として、途上国を専門にしている為、いろいろと知恵を絞るしかなかったこともあるが、裁量はある程度我々に任せていただいており、かなり自由度のある会社の気質があって自由な発想で活動をできる素地が与えられていたことが、ナイジェリアからセネガルへと活動の拠点を広げることができた要因ではないかと思う。村田氏が言われたように、BOPで活動するには時間とコストがかかる。会社のトップの人たちがどこまでその必要性に理解を示してくれるかというのがやはり一番大きな取組の要因ではないかと考えている。
村田氏:やはりリーダーシップのクオリティというのは、今とても大事だと思う。MDGsの中間報告の中に一つあるが、リーダーシップの質が悪いと、国も会社も下降線を転がり落ちていくという統計がある。よって、大きいコストを多大なリスクを背負って即やれということではなくて、地道にその展開を広げていく必要がある。そのためには、やはり私はこれから日本モデルを推進していきたいと思っている。ヤマハの事例をうかがって一番印象に残ったのは、セネガルにおいて、NGOとの協力体制を敷いたということが、非常にインパクトがあったと思う。それによって横展開がこれから大いに広がっていくのではないか。これからの横展開に関して言えば、こういったグッドプラクティスをプールしながら、日本の企業や一般のNGOの方々にどう訴えていくかというのが大きな課題となってくると思う。
最後に、人口が広がっていくということは二つの考え方がある。更に貧困層が増えるという考え方と、更に裕福な人と貧困層のギャップが広がっていくという考え方である。その中で企業の果たす雇用の創出や、貧困層に企業として還元する役割というのは更に深くなってくるのではないかと考えている。その仮説というのをもう少し検証しながら、色々な国々で小さいながらもモデルを展開していきたいと思っている。
Ⅵ.質疑応答
質問①:村田氏に質問。村田氏のおっしゃる四つ巴の構想に私自身非常に同意させていただいたが、逆にこれを推進していくことで、たとえば市民社会が上手く機能しない国があったとして、そこに企業が参入したいと考えていたら、逆に一つでも欠けてしまうと企業が参入したがらないというような、BOPビジネスの可能性を縮小してしまうようなことはないのだろうか。
村田氏:あまりにも企業の利益だけを追求するような状況は、おそらくBOPビジネスとしてつながっていかないというのが私の考えである。だからこそ、今色々な企業は、市民社会との接点、消費者との接点を探しているわけだ。BOPビジネスで一番やってはいけないことは、ただ瞬間的に利益だけを追求して、状況が悪くなったら引き上げるということである。それは、日本の政府にダメージを与えるし、被益政府にもダメージを与えるし、最終的には国連にもダメージを与えるだろう。逆に、ヤマハのようなプロジェクトを考える時には、市民参加のフォーラムがおそらくあって、そのフォーラムを通じて、皆が理解できるプロジェクトを作っていったから今があるのだと思う。それが新しいビジネスの展開のやり方だと思う。
西嶋氏:村田氏が言われたように、一民間企業ではできる範囲が決まってくるので、アライアンスを組むことが必要である。それが、村田氏が今目指している姿だと思うので、そういった市民参加型を含めて、NGO、国連、企業の連携というのが、BOPでも成功事例につながるのではないかと思っている。
質問②:西嶋氏に質問。私はUNDPアンゴラ事務所でアンゴラ中小企業振興プログラムのプロジェクトマネージャーを務めている。アンゴラで中小企業と接していて、実際に目に見える結果を出そうとすると、雇用というのが一番見えやすい。しかし、一つの雇用に必要な職業訓練は、ヨーロッパで5000ユーロ、アメリカで5000ドル、日本だと50万円程度の費用がかかる。アフリカの場合、教育レベルが低いので80万円位かかる。そうすると、1億5千万円の予算があっても、200人位にしか雇用を作ることができない。そういう意味で民間企業とプログラムを通じて職業訓練を提供することで、私たちの取組もインパクトを持つので、私たちにしてみれば日本企業がアフリカに来て、現地レベルでプログラムを協力するというのはとても意味がある。そこで質問だが、さきほどBOPビジネスにはトップの理解が必要だとおっしゃったが、そのプロジェクトを実現するために具体的にどのようなことをされたらトップがOKしてくれたのかを教えていただきたい。
西嶋氏:難しい質問だが、まずヤマハ発動機はアフリカの展開を最近始めたわけではなく、1970年代後半にはアフリカに進出している。今の事業部ができて15年が経つ。この事業部は、途上国を専門にしており、経営トップも将来の途上国ビジネスの可能性に理解があったといえる。ではなぜ経営トップが途上国ビジネスの可能性を先取りし、プロジェクトができるかというと、CSRや援助だけではなく、ビジネスとしてのリターンがあるからである。つまり、民間企業ではやはりリターンがないとGOは出せない。民間を活用するなら、ただ単にお金や人の支援を頼むのではなく、それをやることによって、企業にこういうリターンをもたらしますよというところがキーとなると思う。リターンが見込めないのであれば、特に今のこういう経済環境の厳しい中では、トップはGOを出しづらいと思う。今回セネガルのケースは、将来的にリターンを出す可能性が高いと判断し、実際にリターンを生み出すモデルケースに育てることが出来た。求められるのは何かというと、CSRでも援助でもよいので、実施したプロジェクトに関して会社に間接的にでもリターンを返すということである。直接的なリターンで言えば、少なくとも、ブレイクイーブン、つまりマイナスは出すなというのが一つの企業の判断基準ではないかと思う。
小山氏:私たちも色々な企業と話をしていて、なぜBOPビジネスをやっているのかと聞いてみると、トップが分かってくれたという理由が多い。どういう風に説得したのか色々聞いてみると、CSRは長期的にはプラスになるのだろうけれども、基本的にはコスト・センターであり、BOPはプロフィット・センターであるというように、上手く説明している。つまりリターンを生むということと、リスクをできるだけ小さくするということをいかにできるかというのが説明のポイントである。リスクを減らすという意味では、さきほど村田氏からもUNDPの名前をどんどん使ってくれというお話があったが、政府の名前を使っていただくとか、新聞、ビジネス誌等を活用することもできる。
日本のODAは、戦後各国へ経済の自立を支援することであり、軍事を扱わないということについて評価が高い。また、日本のイメージは、特にアフリカにおいては戦争に参加していないということで、悪いイメージを持っている方が非常に少ない。そうしたものを今、是非使うべきではないかと思っている。
村田氏:ディベロプメント・ベンチャーという考え方が日本の国内に欠落している。欧米ではビジネスのCEOがNGOに行ったり、そのCEOの人が政府に入ったりして人材の流動性がある。そういうディベロプメント・ベンチャーの考え方というのがやはり日本でもこれから必要になってくるのではないか。
小山氏:経済産業省は30代から40代の人をかなり民間に出し、民間での経験を行政に活かそうということをかなり積極的にやっている。
質問③:村田氏に質問。本日の小山氏の講演の中でもBOPビジネスの成功例が何点かあげられたが、これらは皆ガバナンスがしっかりして、州政府とタッグを組んで支援を受けられる地域での成功例だった。ただ、アフリカでは指導層が腐敗して、ガバナンスが崩壊している国家が大多数を占める。BOPビジネスがガバナンス崩壊国家において果たせる役割は存在するのだろうか。それともBOPビジネスが貧困削減という役割を果たすためには、まずガバナンスの改善の必要があって、そこから展開するものなのか、その点をお聞きしたい。
村田氏:アンゴラやインドシナ半島には地雷が随分埋まっている。地雷除去の技術というのは日立にもあるし、コマツもあるし、日本の技術は非常に高い。もしもそれもBOPビジネスという考え方にリンクさせるとするならば、日本の技術者を送って地雷除去に関して技術移転するというのは、これはBOPビジネスとして私は成り立つと思っている。政府が腐敗していようといまいと、やらなければならないミッションというのはあるわけだ。あなたが言われているのは、政府のリーダーシップが不安定な状況の中で、BOPビジネスが成り立つのかということだ。それは、国の政府だけではなくて、地域政府を見なければならないだろうし、その地域政府が全て腐敗しているのだったらおそらく成り立たないだろう。ただし、それではアフガニスタンの状況を見て、BOPビジネスが成り立たないかというと成り立つと思う。なぜなら地域によって非常にばらつきがあるから、その地域の選択に関して、日本政府やUNDPのフィージビリティや情報収集によって、この辺は大丈夫だろうと言う情報は得られる。そこから小さくスタートして大きく育てていくことが可能である。
Ⅶ.ご挨拶 北岡伸一氏(東京大学法学部教授 ミレニアム・プロミス・ジャパン会長)
MPJユースの会合は、若い人たちが自分たちでやることに意義があると思っているので、私はあまり直接介入しないようにしている。彼らの努力でこんなに大勢の方が来ていただいて熱心に聞いてくださったことにとても驚き、嬉しく思っている。
今日聞いたことを、私の専門科目に引きつけてコメントさせていただきたい。日本は戦国時代が終わって江戸になってから、猛烈な人口の増加と経済発展が起こっている。それは戦争が終わったからだ。戦争が終わったら農民は土地を耕し、働けばその利益は自分のものになる。人間は誰しも正当なる欲望を持っている。より豊かになりたい、より自由になりたい、そういうものが一番強い力だ。幸い今は、世界で冷戦が終わり、アフリカの紛争も収束傾向にある。そういう時に皆の、豊かになりたい、よりものを知りたい、自由になりたい、外国にも行きたい、自ら更に高いところを目指したいという欲望をサポートし、協力し、これまたビジネスにこちらに取り込んでいくというのが、我々の発想なのではないか。理想主義のみではなくて、ある種の皆の持っている自己利益に訴えかけることで、ものごとが動くと私は思っている。
ところで、今の日本の傾向は本当に内向きで、行動がリスク回避型になっている。しかし、リスク回避を中心にしていたら何もできない。そうではなくて、利益追求型、チャンス追求型の行動に出ていかなければならない。これは日本が、持てる国になってしまったがゆえの、今は停滞期だと思う。だいぶ落ち込んできたので、これから立ち上がるのではないかと期待しているが、昔の日本は逞しかった。明治期には、日本はまだ農業国で、一体何を輸出しようかということで、一生懸命働いた。東南アジアの、傘をさす習慣が全くないところにまで、傘を売り込んでいったほど、ビジネスチャンスを探して歩いていたわけだ。こうしたチャレンジャー精神というのが、今は本当に乏しい。
もう一つのネックは段々成熟社会になってきて、社会が官僚化しているということだ。同じ組織の中でも情報が通じていないことが多い。大事なことをお互いシェアして、世界に向けてチャレンジしていくということがないのである。
日本には過去にとてもよいモデルが色々ある。そういう色々な過去の遺産をよく思い返して、もう一度日本は世界にチャレンジしていこうという風になったらよいと思う。そういう観点からも、今日はとてもよいお話を聞くことができた。

以上

マラウィのビレッジより 最新の活動レポートが届きました!(第4回)

Gumulira(グムリラ)にてインターンを行っている山本光恵さんからのレポート第2弾をご紹介いたします。

      *****

Existing means of communication within Gumulira village
グムリラ村におけるコミュニケーション(情報伝達)方法について

グムリラ村に比較的安定した携帯電話の電波が導入されてから1年と3ヶ月。村での世帯携帯電話普及率はほぼ0%から70%に増加した。村の主要地4箇所に、アフリカの大手電話会社「Zain」のショッキングピンクのキヨスクが設置され、村での小規模ビジネスの拠点として利用されている。

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【写真:Zain社のキヨスク】

電気のないグムリラ村で太陽光発電で携帯を一度につき約13円で充電をするだけでなく、通話時間を購入できるようにエアータイムの販売、また電話をもっていない人のために公衆電話も置かれている。
しかし農業による自給自足の生活を営む村人にとって、電話代はとても高価なもので、約1分間の会話をするには160クワチャ〈約100円〉も掛かってしまう。160クワチャがお米1kg、大きなトマト10個、コカコーラ3本、卵5-6個に相当する事を考慮すると、たとえ携帯電話本体が普及しても、村人の日々のコミュニケーションツールとして利用されるには時間がかかりそうだ。
村でのコミュニケーションは、現在も昔ながらの方法で成り立っている。テレビ、インターネットや地域ラジオ、村全体に響く放送システムがないグムリラ村で、どのようにコミュニケーションシステムを改善できるのだろうか?この課題に取り組むにあたって、まずは現存しているツールを調べてみることにした。

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【写真:ンタンガ村の村長とアシスタントに村のコミュニケーションについてインタビューを行っている様子】

連絡係が個別訪問するか村中を叫んで回る
グムリラクラスターに存在する13の村それぞれには、村長より「連絡係」に任命された村人がいる。彼らは村の中でも重要な人物(例えば村長のアシスタント、退役政府関係者,富者)を個別に訪問して、ニュースを伝える。本人が不在時には、手紙かメモを残す。その他の一般の村人に対しては、この連絡係が村中を大声で連絡すべき内容を叫びながら歩き回る。グムリラではこの方法が主流だそうだ。日本でいう「火の用心」の夜回りに似ているかもしれない。

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【写真:「連絡係」の一人アベルさん。緊急の場合には自転車で村中を回る。】

掲示板または木に張り出す
告知・広告の書類がある場合には、各村の中心地または重要地点に立つ木の幹に、釘で打ちつけ、掲示する。屋根や雨対策になるようなものが一切無いため、雨が降った場合には、掲示物が濡れてしまう。日本やアメリカではどこにでもある用紙やノートはグムリラ村の住民にとって高価なもので、皆が常に所持できるものでは決してない。日本の町内会回覧板のようなコミュニケーションの方法を導入するには、資源として紙をどのように入手するかを考慮しなければいけない。また村の成人(特に中・高年者)の多くは読み書きができないから、識字クラスが広く導入されるまでは、掲示板だけでのコミュニケーションは不十分になってしまう。イラストを中心とした掲示物を増やしていく必要性がある。

掲示板.jpg
【写真:掲示板として現在使用されている木】

笛を吹く
村人の臨終を伝える場合には笛が使われる。サッカーの審判等に使用される笛と同様のものだが、通夜・葬式の知らせは長い警笛、サッカーやネットボール等のスポーツの試合がある際には短い警笛で村人に情報を伝える。ある時には各村の中心地から、またある時には村中を歩き回って笛を吹く。
車輪の鉄枠を鳴らす 
教会の礼拝などや非常時には、車輪の鉄枠を使用する。教会の礼拝開始を伝える際にはゆっくりしたリズムで2回づつ、非常事態を知らせるには速いテンポで連続して鉄枠を鳴すそうだ。

鉄枠.jpg教会.jpg
【写真左から:非常時に使用されている鉄枠、教会】

インフォメーションテクノロジーに頼らないグムリラ村で、コミュニケーションを改善するにはどうすればいいのか?
現地のボランティアチームと話しあった結果、まずは掲示板そのものの改善(木の幹のみから、雨対策を考慮した掲示板にする)と村の主要人物と地方政府や各分野(病院・学校等)の重要人物を繋ぐ連絡網のような表(兼・電話帳)の作成に取り掛かることになった。今後の活動が楽しみである。

図書館の掲示板.jpg
【写真:政府組織が運営する図書館の掲示板(参考)。
雨避けを追加してコミュニティーセンターと村の中心地に同様な掲示板を置く計画】
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